汚職、談合…「負のレガシー」に刻まれた東京五輪 公判の行方は?
パリ五輪が7月26日、開幕する。日本は2021年の東京五輪で、史上最多となる計58個のメダルを獲得し、コロナ禍の日本列島は歓喜に沸いた。
しかし、その舞台は後に、「負のレガシー」として再び注目されることになる。東京五輪の翌年、東京地検特捜部は、大会をめぐる大規模な汚職事件と談合事件に着手。計22人と6法人が立件された捜査の始まりは、奇しくもパリ五輪開催日と同じ7月26日だった。
5ルートを立件
特捜部が最初に狙ったのは「汚職」だった。
ビッグイベントに「カネ」の問題はついて回ります。仏検察は昨年、不正契約疑惑に関連してパリ五輪の大会組織委員会の本部などを家宅捜索しました。パリ大会開幕に合わせ、東京五輪をめぐって起きた汚職や談合事件の概要、公判の現状をまとめました。
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事(80)には、大会のスポンサー企業に有利な取り計らいをして賄賂を受け取った、という疑いがあった。
元理事は大会の「専任代理店」として圧倒的な影響力を持った広告最大手「電通」の出身。「スポーツマーケティングのレジェンド」と呼ばれていた。
特捜部は22年7月26日、元理事宅などの家宅捜索を皮切りに捜査を本格化させた。8月中旬以降、元理事を受託収賄容疑で計4回、逮捕・起訴した。
元理事が、賄賂を受け取ったとされたルートは五つあった。
まず、同年8~9月に「AOKI」と出版大手「KADOKAWA」のルートを立件した。いずれも大会スポンサー企業で、スポンサー選定や公式ライセンス商品の迅速な承認、スポンサー料の減額などを元理事に依頼したという贈賄容疑だった。
同年9~10月には、広告大手「大広」と「ADKホールディングス」にも捜査の手が伸びた。電通が担うスポンサー獲得業務の一部を、自社に再委託してもらえるよう高橋元理事に頼んだ、という疑いがあった。
大会マスコット「ミライトワ」「ソメイティ」のぬいぐるみを製造・販売した「サン・アロー」の関係者も、ライセンス契約の円滑な締結などを高橋元理事に求めたとする容疑で立件された。
汚職事件で起訴されたのは、収賄側が元理事とその知人2人の計3人、贈賄側が計12人。
検察側は、元理事がこの5社から受け取ったとされる賄賂の総額を約2億円にのぼる、と指摘した。
この汚職の捜査で特捜部が見つけた資料から、別の事件が浮かび上がった。資料は、組織委と電通が一体となって作成した「割り振り表」で、これが「談合」の端緒となった。
437億円に捜査のメス
汚職捜査が終わってまもない…