病院の医師の視点から、地域医療の現状、課題などを多くのエピソードとともに論じた本です。硬い題名ですが、読みやすく、興味深く、考えさせられる本でした。
私は、2か月の無職生活の後、6月からの勤務先は医療系です。そこで、医療の現状等について理解を深めておくため、地域医療、診療報酬等に関する本をいろいろ読んでいるところです。本書も、そういう目的で読んだものですが、自分自身の今後の生き方についても考えさせられました。
本書の内容
著者は、沖縄県立中部病院に勤務する内科医師です。タイ、カンボジアなど、様々な国の地域医療も見聞されています。
著者は、多くの高齢患者の医療(特に終末期医療)、見取りを経験する中で、高齢者や家族にとって、どこで終末期を過ごし、どんな死に方をするのが一番幸せなのかを考察しておられます。また、それができないのは何故か、どうすればできるようになるか、著者自身は明確には示さないまでも、読者に考えさせます。
日本の経済が縮小していく中、今のような延命治療を続けていけないことを断言される一方、財政的な効率の観点のみから、安易に延命治療の廃止を進める議論には懐疑的です。
北欧では胃ろうを開けている高齢者はいないということは、日本ではプラスの側面でのみ語られます。しかし、別の観点から見ると、口から食べられなくなった高齢者は死ぬしかないということであることが指摘されています。
また、一般に食事介助にそれほど時間をかけるわけにいかず、口から食べられなくなった高齢者に胃ろうをするというより、食べさせるのに時間がかかるようになった高齢者に胃ろうをしようとする場合が多いことが指摘されています。
これらのことは、言われてみればそのとおりですが、私はうっかり見過ごしていました。
仕事の参考になればという動機で読んだ本ですが、私自身の今後の生き方、終末期の迎え方を改めて考えさせられました。読んで良かったと心から思います。
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