AIがもたらすファスト社会 「時間をかけて考える」が生み出す価値
ChatGPT(チャットGPT)が人間に代わって、文章を書いたりデータを分析したりする時代が到来しました。私たちは、この革命的な技術とどう共生すればいいのか。AIアナリストの小林啓倫さんは、生成AI(人工知能)がもたらすファストな社会だからこそ、人間は緩やかに考え、対話を追求するべきだと言います。瞬時の反応と分断が支配するネット世界で、それは可能なのでしょうか。
記事で問いかけ → 皆さんの声 → 小林さんのRe:
小林啓倫さんが動画で問いかけた「チャットGPTのような高度なAIが登場してきています。あなたはそのAIにどのような仕事を任せたいですか。そして浮いた時間でどのようなことをしたいですか」。みなさんならどう答えますか。記事の末尾にある「おたよりフォーム」から書き込んでみてください。
――昨年暮れの登場以来、チャットGPTが世間をにぎわせています。
ゼロから文章を作り出すチャットGPTとその基となる生成AIは、まさしく時代を画する革新的テクノロジーです。世間が騒いで当然です。ただ、いますぐにAIが人間から仕事を奪うという論調は、私はちょっと違うと感じています。
――ちょっと違う?
たとえば、記者が現場に行ったり、人から話を聞いたりする行為は、物理的な体がないとできません。コミュニケーションは一筋縄ではいかないので、相手と関係や共通認識を築いて情報を引き出すという仕事は、しばらくはAIに置き換わることはないでしょう。
ただ、メールやプレゼン用スライドの下書きや原案作成、簡単な顧客対応はAIに任せられるでしょう。私も毎日、メールを書きますが、会議依頼など形式的なものはチャットGPTで十分です。今後はプレゼン用スライドもチャットGPTでそれらしいものがあっという間にできて、推敲(すいこう)するだけで完成する、という世界になるはずです。
AIで仕事の効率が上がるのは間違いありません。それによって出来た時間で何をするかが、問われます。
クリエーティブか薄利多売か
――どういうことでしょう。
10人で10日かかった仕事が5日でできるとなると、逆に社員を5人に減らす選択をする会社も出てくるでしょう。生き残るには二通りの方法があると思います。よりクリエーティブな方向を追及する方法と、“薄利多売”の方向に行く方法です。
――薄利多売とは。
AIを使って仕事を短時間で終え、余った時間で他の仕事もこなす。クリエーティブであり続けるのは大変なので、こうした選択をする人もあるでしょう。仕事あたりの単価は下げて多くの仕事を引き受けようとするので、薄利多売モデルと名付けています。
どれがいいというわけではありませんが、各人が自らにあった生き方を選ばなければならない時代になるのは確かです。
――人間にとって、チャットGPTはどういう存在になるでしょう。
やっかいなパートナーになる…