遺伝性腫瘍、切除しかない? アンジーの例「弱く推奨」

有料記事がんとゲノム

月舘彩子 大岩ゆり
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 シリーズに登場した女性たちが診断された遺伝性腫瘍(しゅよう)の遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)。予防切除以外に、がんを防ぐ対策はあるのか。

 HBOCの人は、遺伝子「BRCA1」か「BRCA2」に変異があり、がんを抑制する働きが弱い。

 国内では、1年間に約9万5千人が乳がんの診断を受け、このうち約4%がHBOCだという。HBOCの女性が生涯で乳がんになる割合は約40~90%。日本人全体の9%と比べて高い。卵巣がんになる割合は20~60%。全体の1%と比べて数十倍もがんになりやすい。男性も、乳がんや前立腺がんになる割合が高くなる。

 HBOCと診断された場合にとる、主な対策は二つある。MRIなどを使ってがんが発生しているかを定期的に調べる検査と、リスクを下げるため乳房や卵巣を予防的にとる手術(予防切除、リスク低減手術)だ。

 日本遺伝性乳癌(がん)卵巣癌総合診療制度機構(理事長・中村清吾昭和大学教授)は国内での実績を調査した。2019年8月の時点で、聖路加国際病院などの国内62病院で把握された、遺伝子検査を受けた人のうちBRCA1、2遺伝子に変異があったのは691人。この約12%にあたる85人が、がんのないもう片方の乳房か、両方の乳房を切除していた。変異がある人のうち卵管・卵巣の切除手術を受けたのは、175人だった。

保険適用で経済的負担軽く

 がんのない乳房を切除すると、しなかった人と比べて、死亡リスクを半減させることが海外の研究から明らかになっている。日本乳癌学会は18年に診療指針を改定。この変異がある乳がん患者が、がんのないもう片方の乳房を予防的にとる手術を「強く推奨する」とした。一方、米国の俳優アンジェリーナ・ジョリーさんのように、遺伝子変異はあるが乳がんになっていない人が受ける乳房の予防切除は、「弱く推奨」にとどまっている。

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