寂聴さんとの「間に合わなかった」約束 林真理子さん寄稿
瀬戸内寂聴さんが99歳で亡くなった。親交の深かった作家の林真理子さんが追悼文を寄せ、後輩から仰ぎ見た「文学の山脈」の高さと、「ねちっこい筆」のすごみをつづった。
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瀬戸内先生の訃報(ふほう)を聞いた時の衝撃は、思いのほか大きかった。
九十九歳というご高齢ということもあり、いつかはこの日が来ることはわかっていた。
しかし今年の六月に、女性誌の対談でお目にかかった時は、とてもお元気でよく話された。来年は百歳の祝いを盛大にするということも決まっていたのである。
喪失感はとても大きい。瀬戸内先生は、単に文学界の重鎮だったということではなく、私たち女性作家にとって精神的支柱であり目標であったからだ。
若い頃から、本当に可愛がっていただいた……と考えるのは私だけではあるまい。若い作家たちにも興味を示し、親愛の情をお寄せになっていた。私よりはるかに年下の女性作家たちも、先生を慕い寂庵に集うこともあったと聞く。
私の家には瀬戸内寂聴全集がある。先生からいただいたものだ。それをあらためて手にとってみると、一人の作家がよくこれだけの文学の山脈を築いたと驚くほどだ。
伝記小説があり、現代小説があり、そして源氏物語訳がある。そのどれもが高い評価を得て版を重ねている。
しかしある時、先生が私にこうおっしゃった。
「真理子さん、作家というのは…
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