第4回思いやり予算「増額を」、海部氏に迫るブッシュ氏 ちらつかせたのは
1990年8月にイラクがクウェートに侵攻した「湾岸危機」への対応をめぐり、同年9月の日米首脳会談で、当時のブッシュ(父)米大統領が海部俊樹首相に対し、日本の貢献策に絡める論法で在日米軍駐留経費の日本側負担(HNS=ホスト・ネーション・サポート)の増額を要請していた経緯が、22日に外務省が公開した外交文書で明らかになった。日本は91年度以降、米側に負担義務のある項目も肩代わりを始め、HNSを大幅に増額した。
【特集】外交文書は語る
30年が経過した外交文書は原則公開対象になります。外務省は、特に国民の関心が高い記録については、外部有識者が参加する公開推進委員会で審査し、毎年末、一括して公開しています。朝日新聞の専門記者らが、これらの文書を徹底して読み込み、取材や分析を加え、日本外交史の真相に迫ります。
湾岸危機への対応と重なる時期を契機に増え始めたHNSは93年度に初めて2千億円を超えた。日本の負担項目は96年度にも追加され、2021年度は2017億円。22年度以降は、米軍と自衛隊の共同訓練で使う資機材の費用を日本側が新たに負担することが21日に発表されたばかり。HNSの歴史のなかで、湾岸危機が大きな転換点になったと言える。
HNSが取り上げられたのは、90年9月29日に米ニューヨークで開催されたブッシュ氏と海部氏との首脳会談。「極秘 限定配布」指定を解除された会議録によると、ブッシュ氏は「湾岸危機とも関連する案件としてHNSがある。日本が米国の他の同盟国と比べて最も手厚いHNSを提供してきたことは承知しているが、91年に一層の増額を実現できれば、米連邦議会に対するよい印となる」と要請した。
米議会の不満持ち出すことで…
会談当時、日本政府内では9…
- 【解説】
今回公表された外交文書によって、米軍駐留経費負担(HNS)が、米国の他の同盟国と比較して突出している背景の一つに、「湾岸トラウマ」があったことが示された。HNS増額の最初の契機となったのは、1970年代に日本の高度経済成長による物価と賃金の
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