娘のアトピー治したい 母開発「満月パンツ」、着目したのは天然素材
ミシンがカタカタと音を立て、色とりどりの肌着が出来上がっていく。オーガニックコットンの肌着などを製造するベンチャー企業「マアル」の縫製工場(広島市中区)。肌触りの良さが評判になり、全国のお客から注文が入るブランドに成長した。
きっかけは2000年、生後3カ月だった長女に、重症のアトピー性皮膚炎の症状が出たことだ。原因がわからず、あちこちの病院を回って治療に躍起になった。2年後、自分もアトピーを発症。衣食住を根本的に見直すことにした。
起業し発売、口コミ広がり注文殺到
目をつけたのが、天然素材だった。生理用布ナプキンは通気性が良く、かぶれにくく、洗って繰り返し使える。アトピーの自分にも気持ち良く使え、環境にも良いと気づいた。長女の幼稚園のママ友と布ナプキンの良さや使い方を広める活動を始め、家庭用のミシンを使って作り始めた。友人から「体調がよくなった」「もっと早く使えばよかった」と喜ばれた。
「必要としている人がいる」と直感し、2010年に会社を創業。肌触りが良く、しめつけない下着「満月パンツ」「新月ショーツ」など独自商品を開発し、発売にこぎつけた。友人から友人へと口コミで広がり、インターネットを通じて全国から注文が相次ぐようになった。
21歳になった長女や自分のアトピー症状はほぼ回復した。次女(17)と店舗の飾り付けなどを手伝ってくれる。2人は心強い応援団だ。
お客さんと生産者、地域と自分が「まあるく、気持ちよく、つながろう」。そんな思いを込めたブランド名「マアル」。元夫の転勤で引っ越してきた、縁もゆかりもなかった地で、起業も子育てもできたのは「広島の人たちがやさしく受け入れてくれたから」。気づけば、まあるい縁ができていた。
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大阪府の短期大学を卒業後、デザイナー専門学校でCGを学ぶ。趣味は読書、魚釣り、映画鑑賞。店舗でも毎月、フェアトレードや環境などをテーマに、映画鑑賞会「マアルシネマ」を開催している。