第26回背中押した友の自死 彼氏と別れて見つけた、彼女との居場所
ダックス〈仏南西部〉=疋田多揚
連載「それでも、あなたを」 フランス編②
【フランス編①】敬虔な家に育った私 パーティーの夜更け、短髪の彼女に迫られたキス
敬虔なカトリックの家庭で生まれ育ったマリークレマンスは、同性愛者のオロールと出会い、彼女に惹かれる自分に戸惑います。一度だけキスを求めたところ、オロールは「口づけはするならずっと」と拒みました。
でも、その時はあっさりやってきた。
ある日、オロールが自宅に遊びにきて、そのまま夜を明かした。手もつながずに同じベッドで寝て、オロールは早朝の電車に乗るため早起きした。
そしてまだ寝ているマリークレマンスに、「チャオ(じゃあね)」と、口づけして出かけていった。
魔法のような瞬間でもなかったし、思い描いていたようなドラマチックなシーンでもない。とても自然な流れだった。
「口づけは1回だけするものじゃない。するならずっとだ――」
オロールは確かに私にそう言っていた。
二重生活を打ち切る時
幸福な瞬間は、一線を越えたという自覚を伴った。私はジュリアンを裏切っている。
背中を押したのは、友人シル…