第1回「食事が怖い」豹変したひとり娘 イクラのおにぎり1個でパニックに

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 「かたじけない」

 「ちょっと、ちょっと!」

 「うーん、心にしみるねぇ」

 ちびまる子ちゃんみたいな言葉遣い。

 趣味は朝ドラ鑑賞と、毎朝、新聞を読むこと。家族で回転ずし店に行くと、卵巻きとイクラの軍艦巻きを、もりもり食べる。

 はるかさんは、ちょっぴり昭和の香りがする子だった。

 そんなひとり娘が豹変(ひょうへん)した。

 彼女が、中学3年生だった4年前の5月のことだ。

 「おはよ。お母さん」

 あの日、寝ぼけ眼でいつも通りにあいさつしてきた。食卓には、母(55)お手製の焼きたての卵焼き、納豆、ごはんとわかめのみそ汁。

 娘の好物ばかりなのに、はるかさんは箸さえ持たず、食卓の窓辺から見える新緑を眺めながら言った。

 「おなかすいてないから、いらない」

 水もお茶も拒否した。

 いま思えば、学校での勉強がうまくいかないことがきっかけだったのかもしれない。

 でも当時は、娘がどれほど悩んでいたのか、わからなかった。

 心配した母は学校を休ませ、近所の内科のかかりつけ医につれていった。

 「摂食障害の疑い」と指摘された。

 学校に事情を伝え、しばらく様子をみることにした。

 朝は卵焼きなどと白米をほんの少し。

 昼の弁当は空になってシンクに置かれたが、実は、「お母さんが心配するから食べて」と友人に食べてもらっていた。

 夜も、酢の物や蒸し鶏をほんの少しつまむだけで、炭水化物には手をつけなかった。

 「食事が怖い」と、しだいに食卓につくのも嫌がった。

 起床後、食前食後、就寝前と、1日10回も体重計に乗るようになった。

あこがれの中学、ふらついて立てなかったテスト2日目の朝

 とくに心配だったのが、入浴…

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この記事を書いた人
山内深紗子
デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
専門・関心分野
子どもの貧困・虐待・がん・レジリエンス