ルッキズム、スクールカースト…摂食障害は「生きづらさからの逃避」

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聞き手・山内深紗子
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 歌手のレディー・ガガテイラー・スウィフトといった有名人も、10代で摂食障害に悩んだことを告白している。日本摂食障害協会理事長で医師の鈴木眞理さんは、「生きづらさからの逃避」がこの病気の本質だと指摘する。背景には、つねに他人との比較にさらされている今の社会があるという。

 ――どんな病気ですか?

 他の日常生活は送れるのに、食に関してだけ異常行動を依存的に繰り返す心の病です。患者の9割が女性です。

 国内では、医療機関にかかる人が年間約21万人います。ただこの数は、氷山の一角です。

 自分が病気であるという自覚が薄く、あるいは偏見を恐れてSOSを出しにくいので、実際に悩んでいる方はかなりの数にのぼります。実はかなり身近な病といえるでしょう。

小学生で発症する子も 背景に「やせ神話」のシャワー

 大きく分類すると、明らかな低体重でも本人にその認識がなく、食事量を制限しようとする「神経性やせ症」、大量にむちゃ食いしては、体重増加を抑えるために、吐いたり下剤を乱用したりする代償行為がある「神経性過食症」、過食はするが代償行為はない「過食性障害」に分けられます。

 低い自己肯定感から太ることを極端に恐れるようになります。1980年ごろは、自我の輪郭を持ち始める15歳以降の発症が多かったのですが、最近では低年齢化も深刻で小学生で発症する子もいます。

 今の子どもたちは「やせ神話」や、見た目や容姿で人を判断し偏見を持ってしまう「ルッキズム」のメッセージを幼い頃から浴び続けています。そこに「スクールカースト」が拍車をかけています。

 同級生を容姿や成績などでシビアに選別して序列をつくる。こんな環境で、子どもたちや若者が困難に直面して自己肯定感が低くなっていると、「やせて可愛いという武器」で自分を守ろうとします。

 それが過激なダイエットにつながります。その中の、完璧主義のような強迫性、ストレスの多い環境、ストレス対処能力の未熟さを背景に持つ子どもが摂食障害を発症します。

 女性が多い病気と言いましたが、実は男性にも悩んでいる人はいます。慢性化した中年男性からの相談も受けます。「摂食障害だとは絶対に言えない」と、多くの方がひた隠しにしています。

 ――治りにくいのですか?

 この病の本質は「生きづらさからの逃避」です。

 拒食や過食・嘔吐(おうと)は、その患者さんが生き延びるために必要な支えになっています。「生きたい」ともがいている末の行動です。

 生きづらさの原因は、過去の…

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この記事を書いた人
山内深紗子
デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
専門・関心分野
子どもの貧困・虐待・がん・レジリエンス