八ツ場ダムのいま 68年かけて完成「問題施設から観光ブランドへ」
国の政策に長く翻弄(ほんろう)され、住民の賛否は二分されてきた。民主党政権下では「脱ダム」の象徴となるなど紆余(うよ)曲折の歴史もたどった。そんな八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)が計画から68年の年月をかけて完成。2年がたち「周辺を一大観光エリアにしよう」という動きが活発になっている。
「うわー、すごい迫力だね」。大型連休の最終日だった8日。そびえるダムを見上げ、歓声を上げる大勢の観光客の姿があった。
東京都練馬区の今井茜さん(45)は「昔、話題になったところだったので、一度来てみたかった」。息子の健朗君(9)は新緑の山に囲まれた巨大なダムの姿に「(スタジオ)ジブリの世界みたい」と喜んだ。
ダムの総事業費は約5320億円。国内のダム史上で最高額だった。2020年3月に完成し、同7月から、見学者向けにダムの本体の一般開放が始まった。
国土交通省の利根川ダム統合管理事務所(前橋市)によると、来場者は20年度が約22万人、21年度も約20万人と人気だ。
今年の大型連休、コロナ禍前よりにぎわう
ダム完成とともに誕生した「八ツ場あがつま湖」では、湖を周遊する水陸両用バスに人気が集まる。満席になる日も少なくないという。
ダム以外にも、ダムの水を利用する都県の基金でさまざまな施設が造られた。
とりわけ連日にぎわっているのが、ダム完成前の13年にオープンした「道の駅 八ツ場ふるさと館」(事業費約8億円)だ。今年の大型連休の10日間(4月29日~5月8日)は、コロナ禍前の19年から143%増の約4万7千人が訪れた。近くには滑り台などがある公園もあり、子どもたちにも人気だ。
施設は町が所有。住民ら73人が株主となっている会社が指定管理を受けて運営している。地元の生産者ら約170人が出品する野菜や果物が好評だ。
「観光資源としての八ツ場ダムのポテンシャルは高い」
こう語るのは、地元の川原湯…
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