ベトナム人技能実習生はなぜ激増したのか ゆがんだ制度の改革が急務

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記者解説 GLOBE編集部 織田一

 外国人技能実習制度ができて来年で30年。日本で働くベトナム人実習生は大きく増え、2019年は約22万人に上った。コロナ禍で昨年は16万人に減ったものの、全体の約6割を占める。

 ベトナムが労働者の海外派遣を始めたのは1980年代だ。アジア経済研究所の石塚二葉氏によると、社会主義諸国でつくる経済相互援助会議(COMECON)の枠組みの下、労働省が窓口となって主に国営企業の労働者を当時の東ドイツやソ連に送り出した。

 91年にソ連が崩壊、COMECONが解散すると、日本をはじめ台湾、韓国、マレーシアなどに送り出し先を変えた。日越間では92年に実習生(当時は研修生)の送り出し・受け入れの枠組みが整い、翌年、日本で技能実習制度が創設された。

 政府が制度運営のためにつくった国際人材協力機構に約20年勤めた万城目正雄・東海大教授は、ベトナム人実習生の来日が増えたきっかけとして2003年の中国での重症急性呼吸器症候群(SARS)流行を挙げる。中国は最大の送り出し国だったが、SARSで流れが途絶えた。中国人実習生に頼っていた中小企業、特に半数近くを受け入れていた縫製業者は悲鳴を上げ、縫製が主産業であるベトナムに駆け込んだ。

 そして07年。ベトナムが世界貿易機関(WTO)に加盟し、国営企業の独占状態だった労働者派遣業務が民間に開放されると、「送り出し機関」と呼ばれる実習生派遣会社が雨後の竹の子のようにできた。

■もとは日中合作モデル…

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    安田峰俊
    (ルポライター)
    2022年6月13日15時18分 投稿
    【視点】

    現在の問題だらけの仕組みが作り出されている構図を詳しく解説した、非常にありがたい記事です。保存版でしょう。 通常、技能実習生関連の報道は、個々の実習生がいかに「かわいそう」であるかを描く形で定型化しがちです(ネタ元は港区のNPOと埼玉

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