泣いて笑って大団円、井上道義が最後の指揮 「ほな、さいなら」

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編集委員・吉田純子
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 泣いて笑って大団円。「ミチヨシ劇場」に最後の最後まで翻弄(ほんろう)された。

 30日午後3時。指揮者井上道義サントリー音楽賞受賞を記念するコンサートが、東京・赤坂のサントリーホールで開演した。

 演奏は読売日本交響楽団。今年いっぱいで引退する井上にとって、最後のステージとなった。

 前半のメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」と、ベートーベンの交響曲第6番「田園」は小編成で、ほとんど室内楽のたたずまい。指揮台を置かず、指揮棒も持たず。削(そ)ぎ尽くされた動きのなか、10本の長い指がスローモーションのように空気を編み、ピアニシモの宇宙を泳ぐ。

 どんどん研ぎ澄まされてゆく楽員たちの音が、客席に届く前に、井上の身体に吸い込まれていくかのような錯覚に陥る。

 井上は、ホールとオーケストラの相性に何より心を砕く指揮者である。サントリーホールならではのふくよかな残響を味方に、自身の愛する自然の風景を描き出し、胸いっぱいに吸い込んでいる。もやの向こうから、フルートの鳥の声が、朝の光を連れてくる。これはもうオペラだ。

 ほの明るい光の向こうに希望…

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