休み明け、学校苦しい子へ「逃げていい」は対症療法 元当事者の思い
休み明けは、学校に行くのが苦しい子どもが多くいます。元不登校当事者で、「ひきこもりUX女子会」を全国で開く林恭子さん(55)は、メディアが「逃げてもいい」「休もう」と発信することについて、「必要ですが、それだけでは不十分」といいます。毎年、学校が始まる9月1日に向けて各メディアがキャンペーン報道をすることへの率直な思いも語ってもらいました。
――毎年、学校が始まる9月1日に向け、朝日新聞を含めた各メディアが、不登校当事者に向けたキャンペーン報道をしています。ここ数年は特に多いです。率直に、どうお感じになりますか。
私が不登校だった当時のように、そうした報道がまったくなかった時よりはあったほうがいいと思います。
一方で、不登校は夏休み明けでなく、ゴールデンウィーク明けも増えますし、学校に対するしんどさや違和感がある子どもは常にいるので、9月だけに注目されていればいいということでもないと思います。
――元不登校当事者だった有名人のインタビューも、この時期は各メディアに出ています。
有名人の発信は訴求力が大きいので、「この人もそうだったんだ」「でも無事大人になって、元気にやってるんだ」と思って、ひとつのモデルとして肯定的にとらえている子はいると思います。
私も、不登校になって高校を中退し、自分はもう終わりだと思っていた10代のとき、(エッセイストの)羽仁未央さんが小学校4年生の時から学校に行かずにお父さんの羽仁進さんといろんな所に行っていたという本を読んで、「こんな人もいるんだ」とびっくりし、何度も読み返したのを覚えています。
有名人だけでなく、一般人でもさまざまなモデルケースを見聞きできることは悪いことではありません。
ただ、サクセスストーリーの一部として不登校のエピソードが入る形ばかりだと、当事者にとって違和感はあるかもしれません。
選択肢が増えたぶん
――いまは不登校になっても、通信制やサポート校、フリースクール、フリースペースなど選択肢は多くなっています。
選択肢は本当に増えました。そのぶん、「学校に行かなくてもいいからそこに行ったら」となるので、完全にフリーでいることが難しくなっている現状もあります。
「学校だけでなくフリースクールも行けないの? サポート校もだめなの?」という形で、本人と親をさらに追い詰めてしまうこともあると思います。
――親の顔色を見て、学校に行きたくないと言い出せない子もいると思います。
子どもが「学校に行きたくない」と言う時は、本当にギリギリで限界を超えた段階だということは覚えていてほしいです。
親からするとそのとき初めて言われたので、「少しがんばって行ってみない?」と言いがちですが、子どもからすると、本当に限界の限界で勇気を出して伝えたのにそういう風に言われたら、絶望してしまうと思います。
不登校新聞の石井志昂編集長は、食欲が落ちたり、体調不良を訴えたりなどしたらひとつのサインだと思ってほしいと言っています。
不登校は誰にでも起こりうることなので、親も、「うちの子もなる可能性はある」「なっても不思議ではない」ぐらいに思っておけば、子どももいざという時に言いやすいと思います。
――そう割り切れない親もいるかもしれません。
今でも子どもが不登校になると多くの親御さんはパニックになります。
親族や友人から「育て方が悪かったんじゃないか」「甘やかしている」と言われたり、学校でも暗に育て方について言われたりと、周囲から責められる。支えがないととてもじゃないけど毎日過ごせない、という親御さんもいます。
不登校に対する理解は広がっているようで広がっていないと思います。
原因を本人や家族に帰する限りは
――なぜでしょうか。
ひきこもりも同じですが、不登校の原因が本人や家族にあると思われているからでしょう。そう思われている限りは、苦しむ親子は減りません。
現在の学校が子どもにとって安心で安全な場として機能していない。それを無視して、子どもや親に原因があると考えるのには無理がある。この問題の核はそこにあると思います。
――ご自身の不登校経験をうかがってもいいでしょうか。
高校2年生のゴールデンウィーク明けから、急に頭痛や吐き気、微熱、不眠に襲われました。理由はまったくわかりませんでした。
病院を転々としましたが診断…
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