園バス置き去り「システム導入だけでは防げない」 本当に必要なのは
静岡県牧之原市の認定こども園の送迎バス内で3歳の女の子が「置き去り」となり、命を落としました。再発防止策として、技術の力を借りることが国レベルで議論されています。ただ、今回の園でも出欠確認のアプリは導入されていましたが、正しく運用されていませんでした。ITによるサポートと人の手による確認のバランスを、どう考えればいいのでしょうか。
東京都西東京市の田無いづみ幼稚園では毎朝、通園バス2台の位置情報や出欠が端末に届く。欠席したりバスに乗らずに自家用車で来たりする場合は、保護者がスマートフォンから入力し、反映される仕組みだ。乗せ忘れなどを防ぐのに有効だという。
小林正和園長(42)は、「以前は園で電話を受けていたが、どうしてもタイムラグがあった」と振り返る。約5年前、欠席連絡アプリのついた「バスキャッチ」というシステムを導入。連絡の行き違いがなくなった。
トリプルチェックで園バスの降ろし忘れ防止
ただ、「機械だけに頼ることはしていない」と話す。アプリで入力してもらったバスの乗車状況や出欠連絡をプリントアウトし、毎朝、子どもたちが登園してくるまでに用意。降車時には添乗員が、園に到着後に事務職員がチェック。さらに、バスに乗らずに登園してくる子も含めて全員そろった教室で担任がチェックする「トリプルチェック」をして、降ろし忘れを防ぐ。
その後、給食の配食数チェックのために、クラスごとに子どもの合計人数を集計し、目視でも再び数える。登園時間になっても連絡がない子には、電話をかける。静岡の置き去りが起きてから、再度、全職員で手順を確認した。
「アナログな確認方法だけではどうしてもミスを招いてしまうので、システムの力は借ります。ただ、画面ばかり見ていて生身の子どもをしっかり見なくなっていくのが怖い。命を預かっているので、アナログとITをうまく併用したい」
内閣府などは9日、送迎バスで園児の降ろし忘れを防ぐための安全装置の設置や、各園への登園管理システムの普及について、関係府省会議で検討を始めた。
バスキャッチは「テクノロジーの力で伝言ミスやバスの乗せ忘れなどがないようにしたい」と12年前に開発され、全国の約2100園で導入されている。開発元のVISH(ヴィッシュ)株式会社には、静岡での置き去りの後、問い合わせが相次ぐ。
ただ、営業本部長の西尾真吾さん(39)は、「ITの良さと怖さを知った上で導入してほしい」と願う。
今回、置き去りが起きた静岡のこども園では、別の社の登園管理システムが導入されていた。だが正しく運用されておらず、職員が、亡くなった河本千奈ちゃん(3)を含む、バスに乗っていた6人をまとめて「登園」と入力していた。
「ITはあくまで手段」
西尾さんは、「ITはあくまで手段。導入が目的化し、業務負担の軽減など本来の目的がはっきりしないまま導入しても、時間が経つにつれて正しく運用されなくなり、余計にヒューマンエラーが増えるきっかけを作ってしまう」と話す。
システムを導入しても手書きに戻ってしまった園も。確認を徹底する以外の根本的な解決策について、複数の専門家に聞きました。
「万が一忘れてしまっても感…
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- 【視点】
まさに記事にあるように、ITはあくまで手段であって、人によるトリプルチェックは欠かせないと思います。過去に保育ITサービスをいくつか取材したことがあります。午睡チェックや、紙で記録していた書類のデジタル化など、効率化・低コスト化できるメリッ
…続きを読む