いじめ重大事態28件、認定しても対応せず 浜松市が14~21年度
いじめ防止対策推進法施行後の2014年度から21年度までに、浜松市教育委員会が市立小中学校で起きた計28件の事案について、同法が定める「いじめ重大事態」に認定していたことが分かった。同法や国の指針では、重大事態があった場合には第三者による調査が求められているが、市教委は適切な対応を怠っていた。市教委は被害者らからの申し出があれば、10月に改定した市の基本方針に基づき調査するという。
朝日新聞の情報公開請求によって市教委が公開した資料によると、17~21年度、小学校8件、中学校10件が、重大事態に認定されていた。また、文書の保存期間を過ぎた14~16年度にも計10件が認定されたことが確認できた。
重大事態は、いじめにより子どもの生命や心身、財産に重大な被害が生じたり、いじめが原因で長期間欠席したりした事案だ。浜松市では各校から提出される「認知報告書」をもとに市教委が認定している。
今年3月、18年度に認定された重大事態について市が有識者による再調査をしたところ、市の対応が国の指針に沿っていなかったことが判明。これまでに重大事態と認定されていたほかの案件も、第三者による調査が行われていないことが分かった。また、市教委によると、重大事態に認定したことすら被害者側に伝えていないケースもあった。
市教委の石野政史指導課長は取材に対し、「市の基本方針に沿って対応してきたが、これが国の指針に合っていなかったため、不十分な対応になっていた」と述べた。
母親「なぜ、こんなでたらめな記録が」
市教委は、再調査委の提言を受けて10月、市の基本方針を国の指針に沿って改定した。
15年度に中区の小学校で起きた事案について、第三者による調査を実施する方向で調整中だ。「いじめによる後遺症がある」として、被害児童(当時)の保護者が調査を求めていた。関係者によると、事案は発生時点で重大事態と認定していたが、被害者側に伝えられておらず、調査も行っていなかった。
被害児童の母親は自ら情報公開請求して記録を確認。取材に対し、「当時受けた説明とまったく違っていた」として「なぜ、こんなでたらめな記録が残っていたのか。調査で明らかにして欲しい」と話した。
市教委は、過去に認定した重大事態について、被害者側に伝えることはしない考えだ。「すでに解決した事案など、今から伝えることが、子どもにとって良いかどうか分からないものもあるという判断だ」(石野課長)としている。