「母になったこと後悔」4割が経験 共感のディレクターは出産を前に
約4割の母親が、子どもを産まなければよかったと思ったことがある――。3年前のある調査結果だ。タブー視されてきた「母親の後悔」に、あるテレビディレクターは共感した。自身も10代の頃、「後悔するくらいなら子どもを産みたくない」と思っていたからだ。母になる彼女が、取材の末にたどり着いた思いは。
「子どもを愛している。それでも母でない人生を想う」
博報堂こそだて家族研究所が2019年、子育て情報サイト「ママスタジアム」を利用する母親413人に「これまでに『やはり子どもを生まなければよかった』と思ったことがあるか」と尋ねた。
「ある」と答えた人は40・4%にのぼり、33・6%は複数回あると答えた。
こうした母親の後悔は世界的にも近年話題となっている。
きっかけは、16年に刊行されたイスラエルの社会学者オルナ・ドーナトの著書。「母親になって後悔してる」(鹿田昌美訳、新潮社)の邦題で日本でも今年3月に発売された。
「今の知識と経験を持って過去に戻れるとしたら、あなたは母になるか」の質問に「ノー」と答えた23人の女性にインタビューした本だ。欧米ではSNSで「#regrettingmotherhood」のハッシュタグとともに共感の声が広がった。
邦訳本の帯には「子どもを愛している。それでも母でない人生を想(おも)う」とある。子どもに対して母親が負う重責や、自分自身の時間やキャリアの選択肢の喪失、そしてこうした献身が社会からは当然のことと見なされることへの戸惑いが赤裸々につづられている。
「よくぞ言ってくれた」「日本を滅ぼす気か」
この本を読んだNHKの依田真由美ディレクター(34)は「この後悔は多くの人が思っていることなのだと、すごく興味を持ちました」と話す。
依田さんは同僚とともに取材を始めます。先行配信した記事には、多くの共感の声が寄せられました。一方で、予想していた通りの批判の声も。もっともらしい理由を挙げ、母親たちに「らしさ」や自己犠牲を強いるものの正体は何なのか。依田さんたちが作った番組は、そこに迫ります。そして自身ももうすぐ母になる依田さんが、取材の末に思ったことは。
依田さんは16歳のときの日…
- 【視点】
「ずっと『娘』でいられたら」 20代で結婚後、2人の男の子を育て、次男が高校に入ったことを機に離婚した、従姉の言葉です。記事を読んで、彼女の言葉と、そして「娘」から「妻」「母」という肩書が増えることが時に重荷になる、だからこその従姉の呟き
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