第4回あの日の広島にもおしゃれな人はいた 石内都が撮るきれいな遺品たち

有料記事石内都 横須賀・ひろしま 記憶に向き合う写真

聞き手 編集委員・大西若人

 写真家・石内都さんに半生を振り返ったもらったインタビュー連載「横須賀・ひろしま 記憶に向き合う写真」。全4回の4回目です。(2022年1月~2月に「語る 人生の贈りもの」として掲載した記事を再構成して配信しました)

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 《2006年、「Mother’s」の帰国展が東京都写真美術館で開かれた》

 展覧会を見た編集者から、仕事の話がきました。断るつもりで美術館で会ったら、「『広島』を撮りませんか」って言われて仰天した。行ったこともないし、一生行くこともないと思っていましたが、その人の「広島のこれからはアートです」という言葉が耳に残り、それなら、と初めて広島へ。

 広島の写真は撮り尽くされていると思っていたけど、現地に行ってみると巨大だと思っていた原爆ドームが意外に小さい。広島のイメージって作られていることに気づいて、撮れる気がしてきた。

 最後に平和記念資料館の遺品を見てびっくりしたんです。それまではモノクロ写真の地味なもんぺなどのイメージがあったけれど、ワンピースなんか色がちゃんと残っていて、デザインがカッコイイ。私が1945年の広島にいたら着ていてもおかしくない。あの日に身につけられていた衣服を中心に撮影しようと考えました。

 被爆した時の広島の人はおしゃれしていない印象がありましたが、そんなことはなく、どんな街でもおしゃれな人はいた。私はよそ者の視線で感じたままに撮ればいい。資料としてではなく、このボタン素敵ね、とか、模様がいいな、とか言いながら撮ったので、学芸員の人も驚いていました。

 私の写真はきれいすぎるとも…

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