30年目のJリーグ、いでよビッグクラブ チェアマンの成長戦略とは
サッカー・Jリーグは17日、開幕から30周年となるシーズンが始まる。地域密着、スポーツによる町おこしを実践してきたリーグは節目を迎え、新たなステップを模索する。「護送船団」から「競争」へ。国内各地に浸透したJリーグをピラミッドに例えるなら、頂点を引っ張り上げることで全体を成長させていく青写真を描く。
「本気で競争しないといけない」。1月末、Jリーグ理事会後の記者会見で、就任2年目を迎えた野々村芳和チェアマン(50)は口にした。世界に通用するレベルのサッカーと経済力を兼ね備え、海外ファンからも応援される「ビッグクラブ」をJから生み出したい――。そんな決意だった。
1993年に10クラブで始まったJリーグは、30年かけて確かな歩みを刻んできた。クラブ数は今年、1~3部(J1~J3)で計60に達し、41都道府県に広がる。プロ野球と並ぶ人気プロスポーツにサッカーを押し上げ、バスケットボール・Bリーグなど他競技が地域密着の理念に追随した。
6代目で初のJリーガー出身となる野々村チェアマンは、その成長に地方から一役買った人物。選手時代を過ごした北海道コンサドーレ札幌の社長を約9年務め、元日本代表・小野伸二獲得など積極補強で攻撃的なサッカースタイルを築き、J2に低迷していたクラブをJ1に定着させた。アジア市場を見据え、他クラブに先駆けてベトナムやタイの人気選手獲得に乗り出したアイデアの持ち主でもある。
そんなチェアマンには現状が物足りなく映る。
トップクラブをグローバルコンテンツに
例えば、主な収入源である動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」の放映権料は2017~28年の12年間で計2239億円。世界最高峰とされるイングランド・プレミアリーグの放映権料は、コンサルティング会社デロイトによると、20~21年の1シーズンだけで約5393億円(約37億7千万ユーロ)に上る。クラブレベルで比べても、J1クラブの年間平均収益約41億5900万円(21年度)はイングランドの約1割にとどまる。
欧州に大きく見劣りする市場価値は、かつてのようには海外の有名選手が集まらず、若い日本選手がJリーグで活躍する前に海外移籍する「空洞化」を加速させる一因にもなった。
そこで、野々村チェアマンが打ち出した方針が「トップクラブがグローバルコンテンツとして輝く」だ。リーグの牽引(けんいん)役となるビッグクラブを生み出すことで、全体を次の成長軌道に乗せようともくろむ。
そのため、リーグからクラブへの配分金をJ1に傾斜させていくという。年間収益の1~2割程度を占めるクラブの貴重な財源だ。現状、J1への配分金はJ2の約2倍。これを段階的に5~6倍に広げる。
長期的な個々の配分額は今後検討するが、コロナ対応に充てていた資金も使い、下位の減額は抑えたいという。「トップに立つ野心を持つクラブ」(野々村チェアマン)に幅広くチャンスを与える狙いで、24年度は、従来の配分金に加える形で総額21億円を主にJ1の前年1~9位に振り分ける。
結果、上位と下位との「格差」は広がるが、野々村チェアマンは「60クラブが各地域で輝く」との方針も掲げる。「グローバルなクラブが出てくれば放映権料も高くなり、他のクラブも助かる」と説明している。
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