第4回スケジュール帳は空白、引きこもった75歳 外出へ背中を押した一言
朝、目が覚めても起き上がれない。
全身がだるく、気力がわかない。
「どうせ今日も予定はない」。布団の中でそんな思いが胸に去来する。
営業マンとして50年以上、数多くの取引先と毎日話すことが生きがいだった。だが、退職したとたん、ほぼ誰とも話さなくなった。
定年後の生活、イメージしていますか。 思い描いていた「リタイア後」の暮らし、過ごせていますか。 仕事に身をささげた日々が終わって、ほっとする暇もなくやってくる「クライシス」とは。記事後半で、「充実した定年後ライフへのヒント」も紹介しています。
寝間着姿のまま、自宅2階の自室のテレビをつける。1階に下りるのは、食事の時だけ。ほかの時間は「一緒に住んでいる妻が息をしているのかさえ、わからない」。
2020年春、新型コロナの感染が広がり始めたころのことだ。
大阪市旭区の横井英司さん(78)はこの年の3月末、長年勤めたOA機器部品の会社を75歳で退職した。
外出は、品薄が続くマスクを買い求めるときくらい。近所では手に入らず、繁華街の商店街まで行った。
繁華街では、「仕事帰りにデパ地下で妻への手土産を買うことが楽しかったな」と、退職前のことをふと思い出した。
マスクはなかなか手に入らず、徐々にマスクなしで出かけることもままならなくなった。
家に閉じこもり、「引きこもり」状態になった。
75歳まで営業職だったのに…「予定のないつらさ」
太平洋戦争中の1944年生まれ。一家は翌年の大阪大空襲を、京阪京橋駅の駅舎下でやり過ごし、生き抜いた。
社会人としての人生も、一筋縄ではいかなかった。
工業高校を卒業後、大阪市の…
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