第6回「長いことやりすぎたわ」漁師たちの世代交代 世襲のほか脱サラ組も

【連載初回はこちら】取材断られ…記者は町に住み込んだ

和歌山県太地町で続くクジラやイルカの追い込み漁。ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」で批判的に描かれ、論争の的になりました。漁師たちはどんな人たちなのか。日々何を考えているのか。漁師たちのいまを伝えます。全10回の連載です。

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 手元の温度計で4・2度。吐く息が白くなる1月下旬の朝、親方たちの下で働く乗組員8人が浜にのこっていた。

 とらえたイルカを水族館に移すまで飼育する「いけす」の網をそうじするためだ。

 8人は太地湾に浮かぶいけすへボートで出ていった。海にもぐって網を回収するため、ウェットスーツ姿の人もいる。

 1時間後、網を積んだボートが戻ってきた。ずぶぬれの乗組員はたき火で暖をとる。

 網をひろげると、緑色の藻がからまっている。高圧洗浄機で藻を洗い落としていく。

 いけすの網の回収に、水族館向けの選別。メインで海にもぐるのは乗組員の仕事で、親方以上に体力的にハードだ。乗組員の過去の最高齢は72歳。そんな人でも海にもぐっていたのだという。

 親方がやめると、乗組員の誰かが親方に繰りあがる。

 いまの親方12人のうち、半分が親のあとを継いだ2代目だ。

 親方の息子がその船の乗組員…

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