門井慶喜さんが書く「横から見た奈良」 巧みな説法の僧侶はあの人か
今年、映画の全国公開で再び脚光を浴びた「銀河鉄道の父」で直木賞を受賞した門井慶喜さん。数多くの歴史小説を世に出してきました。江戸(東京)に京。日本の中心地を舞台にした作品も有名です。でも、あのいにしえの都のことは、まだ書いたことがないといいます。そうです、奈良のことです。
門井さんは大学時代、京都でも奈良寄りの町に下宿。サークル活動でもちょくちょく奈良の社寺を訪ねていました。このたび、そんな縁もある地をテーマにした文章を、定期的につづっていくことを決めました。はじめに紹介してくれるのは、建築美で「凍れる音楽」と称される塔で知られる世界遺産のあのお寺です。
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中学生のとき、修学旅行で奈良に行った。
栃木県から新幹線を乗り継いで、名古屋駅のあたりで車窓からナゴヤ球場(ナゴヤドーム=現・バンテリンドームナゴヤ=はまだなかった)をまのあたりにして、テレビで見たのとおなじだと大騒ぎして、さて京都で降りたのかどうか。
ひょっとしたら新大阪まで行って、そこからバスに乗ったのかもしれない。どっちにしても私たちが最初に行ったのは奈良であり、バスが最初に着いたのは薬師寺だった。私には生まれてはじめての場所だった。
薄暗く、しんとした本堂のなかで真摯(しんし)に仏像と対峙(たいじ)する。そんな事前のイメージとは異なって、私たちは青空の下、境内の一角に集まるよう言われ、お坊さんの説法を聞かされたのだが、これがめっぽう口調が明るく、笑いあり、哀愁あり、数々の逸話あり。
記事の後半では、門井さんの古都への関心や思いについてもお聞きしています。
内容的には仏様に手を合わせなさいとか、親に孝行をつくしなさいとか、まあ世間なみのことなのだけれども、同級生の女の子たちなど、話術にすっかり引き込まれて、
「まるでテレビみたい!」…
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