第5回「宝塚は『できません』が言えない世界」 音楽学校から始まるルール
宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)に入団するには隣接する宝塚音楽学校で2年間、歌唱や踊り、演技を学ばなければならない。自宅から通えない生徒は「すみれ寮」に入って共同生活をし、通学する。
【連載一覧】すみれの花、その陰に 問われる宝塚歌劇団
夢の舞台に立った劇団員は、なぜ亡くなるに至ったのか。華やかな舞台の陰にある問題を見つめます。
音楽学校には、数年前まで生徒間に受け継がれてきたルールがあった。
先輩が乗っているかもしれない阪急電車に向かってあいさつをする。
上級生の前ではみけんにしわを寄せて口角を下げる。
上級生には原則「はい」「いいえ」などといった言葉のみで返事をする……。
2000年代に同校で学んだ歌劇団OGは、「爆弾ノック」を強く記憶に残している。
すみれ寮の一室に1年生(予科生)が集められると、2年生(本科生)がノックをして1人ずつ呼び出し、「私語をした」などといった指導をする。大勢の本科生に囲まれて指導を受ける生徒もいたという。
「私ばっかり悪者じゃん」
校内の掃除は場所を一人一人わりあてられた。自分の「分担さん」(掃除場所で同じ担当の本科生)に掃除用具を隠されることもあったが、「みんながされることでいじめだと思ったことはなかった」。先輩と楽しく話せる「おゆるし」という時間もあった。
自分が本科生になると、「同…