第9回「石ころも不愉快な言葉もなく」天皇出迎え 中国側の腐心、克明に

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 1992年当時の外交文書が公開された。日本は、貿易摩擦を抱える米国と冷戦後の国際秩序を探る一方で、未来志向の日中関係をと史上初の天皇訪中を検討。外交と内政のせめぎ合いを当時の極秘文書をもとに見つめ直す。

 宮沢内閣は8月25日、天皇、皇后両陛下の訪中を閣議決定し、中国政府と同時に発表した。10月23~28日に北京、西安、上海へ。日本側が1月の外相会談で打診し、厳秘を通した日程より1日後になった。

 焦点は、陛下が外国訪問で述べる「おことば」に移る。この日外務省であった準備委員会の初会合で、外務省アジア局長の谷野作太郎は「過去宮内庁より漏れた経緯もあり、石原(信雄)官房副長官からくれぐれも留意ありたいと話があった。保秘上『平成元号』に匹敵する」と述べた。

 戦争責任を謝罪するための天皇訪中ではないと宮沢内閣は説明してきたが、中国側の「おことば」への関心は高かった。駐中国大使の橋本恕は8月22日付の外相宛て公電で、中国外務次官の徐敦信の「日本側で決める問題だが、ご訪問の円満なる成功のためには、非公式に事前に相談していただくことが必要」との言葉を伝えた。

 そもそも橋本自身が半年前…

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