第2回「素早い解決」がハマる落とし穴 帚木蓬生さんが説く「急がない力」

有料記事解なき今を照らすために

聞き手・小村田義之
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 「ネガティブ・ケイパビリティ」。いま各方面で重要性が指摘される言葉です。いったいどういう意味で、どんな時に役立つのでしょうか。この言葉に詳しい作家・精神科医帚木蓬生さんに聞いてみました。

 ――帚木さんは「ネガティブ・ケイパビリティ」という著書で、負の能力の重要性を指摘していますが、どういう意味ですか。

 「『答えの出ない事態に耐える力』のことです。世の中は明確な答えのある問題ばかりではありません。むしろ人間社会は、解決できない問題の方が何倍も多いのではないですか。先が見えず、どうしようもない不安に耐えながら、熟慮する。答えが出なくても問題に挑み続ける力こそ、ネガティブ・ケイパビリティです」

 「これに対し、正の能力、ポジティブ・ケイパビリティは、答えをみつける問題解決能力をさします。学校教育もそうですよね。テレビでクイズ番組を見ても、記憶した答えを素早くはき出すことを競います。でも、多角的、長期的な視野でものを考えることも大事です。早く答えを出すと見落とすものがあるからです」

 ――どういうことですか。

 「今ここに、理解できないも…

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この記事を書いた人
小村田義之
政治部|外交防衛担当キャップ
専門・関心分野
政治、外交安保、メディア、インタビュー
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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2023年12月27日17時0分 投稿
    【視点】

    スポーツの世界に当てはめると、勝利こそがすべてだと解釈する考え方は「ポジティブ・ケイパビリティ」だといえます。勝敗という試合結果で、それまでのプロセスを解釈する。勝てばよい、負ければ間違っていたと。いわゆる勝利至上主義です。 でも、スポー

    …続きを読む
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    天野千尋
    (映画監督・脚本家)
    2023年12月27日17時0分 投稿
    【視点】

    『答えの出ない事態に耐える力』 もうまさにこれです、と声を大にして言いたいです。 私自身、スマートフォンを開けばすぐに答えが見つかる、効率よく情報を得られる、それが当たり前の生活を続けていると、「分からない」状態でいることが普通でなくなり、

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