第2回「素早い解決」がハマる落とし穴 帚木蓬生さんが説く「急がない力」
聞き手・小村田義之
「ネガティブ・ケイパビリティ」。いま各方面で重要性が指摘される言葉です。いったいどういう意味で、どんな時に役立つのでしょうか。この言葉に詳しい作家・精神科医の帚木蓬生さんに聞いてみました。
――帚木さんは「ネガティブ・ケイパビリティ」という著書で、負の能力の重要性を指摘していますが、どういう意味ですか。
「『答えの出ない事態に耐える力』のことです。世の中は明確な答えのある問題ばかりではありません。むしろ人間社会は、解決できない問題の方が何倍も多いのではないですか。先が見えず、どうしようもない不安に耐えながら、熟慮する。答えが出なくても問題に挑み続ける力こそ、ネガティブ・ケイパビリティです」
「これに対し、正の能力、ポジティブ・ケイパビリティは、答えをみつける問題解決能力をさします。学校教育もそうですよね。テレビでクイズ番組を見ても、記憶した答えを素早くはき出すことを競います。でも、多角的、長期的な視野でものを考えることも大事です。早く答えを出すと見落とすものがあるからです」
――どういうことですか。
「今ここに、理解できないも…