「速く」「分かりやすく」で単純化する社会 覆う不寛容と遠のく対話

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聞き手・田中聡子
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 「エビデンス」という言葉が日常会話でも当たり前に使われるようになりました。文芸評論家の鴻巣友季子さんは、「自分こそ正しい」というバトルのツールになっている面がある、と指摘します。話を聞きました。

 科学的根拠は重要ですし、私も大学の授業で「エビデンスを示すように」と言っています。ですが、誰かの意見に「エビデンス」を求めたり、自分の「エビデンス」を主張する際に、それが相手を言い負かす目的だけになったりしている場合があり、そういう風潮には疑問を感じています。

 SNSでは、強い言葉で、短時間で、分かりやすく立場を表明する人に支持が集まります。何かが起きた時、すぐに明確な言葉を発信する人が「バズる」。そしてその際に根拠として何らかのデータなどを提示すると、「エビデンスがある」として、その意見の正しさが裏打ちされるかのような効果があります。

目的化した「バズる」

 私が書いている書評や映画評…

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    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2023年12月7日6時35分 投稿
    【視点】

    このような言論現象、そもそも「証拠」「根拠」といえばいいのに何故「エビデンス」などという語をことさら振りかざすのか、という点から私は気になる。 マウント語というべきか、そういった悪貨「で」良貨を駆逐する目的を持った言霊には独特の匂いがあり

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    綿野恵太
    (文筆家)
    2023年12月7日7時46分 投稿
    【視点】

    「それってあなたの感想ですよね?」――2ちゃんねる元管理人のひろゆきさんの有名な言葉です。テレビ討論番組でインターネットの悪影響を指摘する論客を「論破」した言葉として知られています。彼が「論破王」としてのキャラを確立するきっかけとなりました

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