台湾で13日投開票された総統選と立法院選のダブル選挙は、与党・民進党の頼清徳(ライチントー)氏が当選を果たしたが、同党が圧勝した4年前と異なり、与野党3党が競り合う接戦となった。何がそうさせたのか。台湾の選挙を現地で分析し続ける小笠原欣幸・東京外国語大学名誉教授に聞いた。
――前台北市長の柯文哲(コーウェンチョー)氏率いる民衆党が本格的に参戦し、民進党VS国民党という2大政党による長年の構図が変わった。その意味は。
台湾政治のダイナミズムがさらに活発になり、票の流れが複雑になった。柯氏は、さながら日本の「小泉劇場」のように「古い政治をぶちこわす」と訴え、若い世代を中心に支持を集めた。20代に限れば5~6割の支持を得ており、これは驚異的。民進党は前回、総統選で約57%の得票を得たが、大幅な減少分の多くは民衆党に流れた。
――中台問題について、柯氏の主張は民進党より対中融和的に映った。
若い支持層の間で(台湾は台湾であるという)台湾アイデンティティーが揺らいでいるのではないかという誤解があるが、実際は逆だ。彼らは民主化が定着した中で育った世代。台湾アイデンティティーが自明のものであり、現状維持ではどの候補も一致しているからこそ、彼らの間では中台問題が大きな焦点にならなかった。
柯氏は政権の非効率や不祥事、若者の悩みである住宅価格の高騰、賃金の停滞など内政に焦点を当て、対中政策はあえて明確な立場をとらなかった。「両岸は家族」という中国側の言い方に同調するのも、中国と向き合うための方便だと割り切っており、支持者に不安感は抱かせていない。
まだ世代の壁を乗り越えられていないが、チャレンジは成功したと言っていいだろう。
「すぐに軍事侵攻があるという危機感の人は少ない」
――野党は総統選候補の一本化に失敗した。成功していれば、結果は違ったか。
そうとも言い切れない。国民…
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- 【視点】
台湾の選挙で右に出るもののいない、小笠原先生の分析。重要なのは民衆党の躍進が台湾アイデンティティの揺らぎではなく、台湾アイデンティティが自明になった中で、中台関係を主要な争点にすることなく、経済や社会に関する問題に注力したことが若年層の民衆
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