「すべてのものにAIを」広がる未来、深まるリスク 軍事利用も進む
記者解説 編集委員・五十嵐大介
対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」の登場で注目されたAI技術は、今年さらに進化と普及が進みそうだ。「インターネットの誕生」に匹敵する変化ともされる最新のAI技術は、多くの恩恵が期待される。一方で、様々な問題も指摘されており規制の動きが広がる。
「AI For All(すべてのものにAIを)」。1月に米ラスベガスであった技術見本市「CES」は、会場の看板のこの言葉のようにAI一色だった。
米マイクロソフト(MS)が「ウィンドウズ」向けに約30年ぶりにキーボードを刷新したというパソコンは、ボタン一つで対話型AIが立ち上がった。韓国サムスン電子は、カメラで野菜などの出し入れを認識する冷蔵庫や、音声指示を受けてプロジェクターで映像を流す球体ロボットを披露。AIがさらに私たちの身の回りに広がる未来を予感させた。
周囲の状況を把握し、無人運転で農薬が散布できる農機具。タブレット端末のカメラで撮った顔の表情から、うつ病の症状を分析できるAIソフト――。こうした技術は、少子高齢化が進む日本へのヒントにもなるかもしれない。
最新のAI開発を主導するのが、チャットGPTを運営する米オープンAIなどの新興企業と、それらに出資する米IT大手だ。MSは昨年2月、チャットGPTの技術を搭載した検索エンジン「Bing(ビング)」を発表。MSの動きが号砲となり、IT大手による生成AIの製品投入レースが始まった。
米グーグルは対話型AI「Bard(バード)」で対抗。IT大手は企業向けクラウドサービスなどを通じて、メール作成や文書の要約、コンピュータープログラムの作成といった様々な支援機能を打ち出している。
ポイント
最新のAIは文章だけでなく動画や音声など様々なデータを扱い、機能が広がる。開発競争は米IT大手が主導しており、独占的な立場が強まることが懸念される。AI規制は欧州が先行しており、米国や日本を含む国際協調や実効性の確保が課題だ。
従来のAIは画像認識や翻訳…