第3回「強いられた死者ほど醜悪なものはない」 金時鐘さんを苦しめる夢

【動画】済州4・3事件を記録する施設を訪れた金時鐘さん=中野晃撮影
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 婦(おんな)が笑っている。

 妖気に魅入られた鬼気さながら

 目元をつり上げ笑っている。

 惨慄な殺戮(さつりく)の4・3のさ中

 装備もものものしい討伐隊の軍警に

 大仰に両腕をひろげ

 ゲラゲラクックと笑いだすのだ。

 乳房のふくらみも白く見えている。

 ずり落ちたチマのはだしの婦。

 村ごと焼き払われ乳呑(の)み子までも銃撃された

 橋来里(キョレリ)の虐殺からひとり取り残されてしまう

 三児の母の彼女である。

      ◇

 金時鐘(キムシジョン)さん(95)が近年に書いた詩「笑う」の一節だ。

 故郷の韓国・済州島で起き、金さんが日本へ逃れる契機となった1948年の「済州4・3事件」の惨状を題材にした。軍警の討伐で集落の住民が片っ端から虐殺され、法事でその場にいなくて生き残り、「気が狂(ふ)れてしまった」母親を描いた。

 師走の済州島への墓参の旅。金さんは移動の車中、悲話が残るこの集落跡をはじめ、残酷な死の記憶を想起させる現場の近くを通っては、目の当たりにした惨状を口にした。

 「問答無用の殺戮(さつりく…

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