米軍基地周辺のPFAS汚染 国内対策追われる米国、日本で対応鈍く

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棚橋咲月 小野太郎 オアフ島=渡辺丘
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 発がん性が指摘される有機フッ素化合物(総称PFASピーファス))が日本国内の米軍基地周辺で検出され、住民生活への影響が懸念されている。米国でも問題は広がり、米政府は国内向けに規制を強め、大規模な対策予算を投じる。だが、日本国内では対策に積極的と言えず、住民は不信感を強めている。

 市街地の真ん中にある米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)。近くの畑では、県の調査で環境省の暫定目標値を上回るPFASの値が継続して検出されている。

 この地区で長年農業を営む宮城優さん(59)は「生まれ育った土地や水を汚された。米軍基地の騒音や事件事故に我慢してきたが、怒りが抑えられない」と声を震わす。

 3千平方メートルの畑を持ち、わき水も使って里芋の一種、田芋を栽培してきた。有機農業が自慢だっただけに「水が汚染されているとわかり、作物がつくれなくなった」。

立ち入り調査に日米地位協定の壁

 沖縄県でPFAS問題が表面化したのは、県が米軍嘉手納基地周辺の河川や浄水場の調査結果を公表した2016年1月。代表的物質のPFOS(ピーフォス)は、約44万人に水を供給する北谷(ちゃたん)浄水場から1リットルあたり最大80ナノグラム、嘉手納基地内を通る河川では最大1300ナノグラムを検出した。

 県は16年以降、汚染源を調査するため、複数の米軍基地への立ち入り調査を計6件申請してきた。このうち、20年に普天間飛行場からPFASを含む泡消火剤がドラム缶700本分以上(14万リットル超)住宅街に漏れたケースなど2件は、米側が自ら「環境に影響を及ぼす事故」と認めて通報したことで、日米地位協定の環境補足協定に基づき立ち入り調査が認められた。残る4件は日米地位協定によって基地の管理権を持つ米側が応じていない。

 今年度までの8年間、県がPFASに汚染された水質の分析や原因物質を吸着する活性炭の取り換えなどに要した予算は計32億円。うち10億円を沖縄防衛局が補助したが、将来の見通しは不透明で、県は今後10年間で、80億円以上のPFAS対策費が必要とみる。

 沖縄の水道料金は10月から1立方メートルあたり約102円から約136円へと段階的に3割値上げされる。物価高騰や老朽化対策に加えて、値上げ分にはPFASの対策費も含まれる。水道料金の値上げにPFAS対策費を含めるのは全国初とみられる。

米軍基地周辺のPFAS汚染は、沖縄以外の日本各地に広がっています。米国内でも深刻な問題になっていますが、日本国内とは対策の力のいれようが異なります。記事後段では、ハワイの現場や専門家の見方も紹介します。

 玉城デニー知事は「基地由来…

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この記事を書いた人
小野太郎
那覇総局|沖縄県政担当
専門・関心分野
国内政治、沖縄
渡辺丘
国際報道部次長|中東アフリカ、核・平和
専門・関心分野
安全保障・外交、核・平和、基地、情報、テロ
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