小澤征爾さん訃報、午後7時の意味 山田和樹は言った「黙禱しない」
休憩は終わり、オーケストラが再び舞台に並んだ。それなのにチューニングは始まらない。
すると、この日の指揮者、山田和樹(45)が足早に現れた。片手にマイクを持ちながら。
「悲しいお知らせが入りました」
「小澤征爾先生が亡くなりました」
コンサートホールは、一斉にどよめきの声があがった。
それでも山田は淡々と続ける。
「悲しみの中で演奏会をするのは先生の望みではない」
「音楽は楽しいものとして、共有したい。黙禱(もくとう)はしない」
そしてこう結んだ。
「本日の演奏を先生に捧げさせて頂きたいと思う」
拍手の中、山田は一度舞台裏に下がる。足早に、無表情で。オーケストラはその姿を見届けた後、いつも通りのチューニングを始めた。
◇
9日午後7時。小澤の訃報(ふほう)が発表された時、山田は東京・赤坂のサントリーホールでまさに演奏を始めようとしていた。この日は自身が首席客演指揮者を務める読売日本交響楽団の定期演奏会だった。30分弱で前半の曲が終わり、休憩に入ったところで、楽団スタッフから小澤が亡くなったことを伝えられたという。
「困った」
舞台裏で一報を聞いて、まずそう思ったという。山田らしいあっさりとした表現だが、言い表したかったのは、おそらく困惑だけではない。
「日本人として道なきところ…
- 【視点】
先だっての村上春樹さんの素晴らしい追悼文、そしてこの記事を読んで、改めて日本が誇るマエストロの死を悼んでいる。しかし、武満とベートーベンの演目が予め選ばれていた偶然、、。人は死に際し、必ずと言っていいほど、こういう不思議な偶然を起こすものだ
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