「待ってました」出囃子はジュディマリ 女子大生の人生を変えたもの

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田辺詩織
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 お年寄りに引っ張りだこだった女子大生が高座に上がり、世代を超えて笑いを届けるようになった。人前で話すのが苦手だった学生落語家は10年後、花を咲かせた。

 1月中旬、相模原市。約1800人を収容できる相模女子大グリーンホールにJUDY AND MARYの「そばかす」が流れた。黒紋付きをまとった鈴々舎(れいれいしゃ)美馬(みーま)=本名・小林千華さん(30)=が登場すると、大きな拍手が送られた。

記憶が頭に浮かんだ

 昨年11月、5年9カ月の前座を終えて二ツ目に昇進した。記念の落語会を地元で開くことが決まったとき、落語家を志すきっかけになった記憶が頭に浮かんだ。

 桜美林大の町田キャンパスに通う落語研究部の「雛菊(ひなぎく)亭ちづる」として、敬老会や神社の祭りに呼ばれる人気者だった。「客に話の先を想像してもらう。笑いも泣かせもあります」。当時の取材に落語の奥深さを教えてくれた。

 年に30件の依頼があり、警察署主催の振り込め詐欺撲滅大会でも披露した。

 「待ってましたっ」。着物姿で座布団に座ると、かけ声が飛ぶ。「面白くなくても、笑ってくださいね」。絶妙な間を作り、弾けるような笑みと会場に通る声が聴衆の心をつかむ。孫のような存在に笑いを求める輪が広がっていった。

 おっとりした性格で声も細く、引っ込み思案だった。着物に袖を通すとスイッチが入る。学生の全国大会で決勝に残るようになり、所作を磨いて大勢の前で披露したいと思い描いた。

 だが、「プロとしてやってい…

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