世界はいずれ「日本化」する GDP4位騒ぎへの水野和夫さんの戒め
日本の国内総生産(GDP)が昨年ドイツに抜かれ、4位に転落した。5位インドに抜かれるのも時間の問題だ。経済低迷・超少子高齢化という難題を抱えた日本の「失われた30年」を、欧米は「Japanification(日本化)」と呼び、避けるべき事態だとしてきた。しかし、経済学者の水野和夫さんは、それこそ歴史の必然であり、むしろ望ましい状態だという。どういうことか。
みずの・かずお 1953年生まれ。法政大法学部教授。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)などを歴任。著書に「資本主義の終焉と歴史の危機」「次なる100年」など。
人口3分の2の国に抜かれた意味とは
今回の順位転落を、2010年に中国に抜かれた時以上の衝撃で受け止める人もいるようです。日本のGDPの水準低下は、短期的には円安の影響。「異次元緩和」で日本を安売りしてきたツケですが、もっと根深い原因があります。
ドイツの人口は、日本の約3分の2なので、国民1人当たり1・5倍の経済格差がついたことになる。しかも、ドイツ人の平均年間労働時間は日本人より2割ほど短い。要は日本の労働生産性が低いということですが、それは、付加価値に結びつかない仕事が多すぎるからです。必要性が不明な会議の資料作りとか。それでいて「人手が足りない、足りない」と言い続けている。だったら無駄な仕事を削ればいいのに。そこの労働時間を短縮しただけでは、GDPは変わりませんが。
国民1人当たりのGDPを高めたいなら、最も簡単な方法は、フルタイムで働いていない労働者を減らすことです。所得税の課税や配偶者控除の基準となる103万円や、年金の第3号被保険者でいるための上限130万円など、いわゆる「年収の壁」を取り除けば、非効率な就業調整はなくなります。これらの制度は、男性正社員と専業主婦の家庭を前提にした昭和の遺物。他の先進国のようになくせば、女性の活躍にもつながるはずです。
ただ、1人当たりGDPが5…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
- 【視点】
「下り坂をそろそろと下る」という、劇作家・演出家の平田オリザさんの著書があります。富国強兵的な経済への妄信を見直し、成長社会に戻ることのない社会に軟着陸することが提唱されていました。水野さんへのインタビュー記事を読んで、真っ先に思い出したの
…続きを読む