春闘の満額回答、九州大手も続々 中小企業や非正規への波及焦点

江口悟
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 今年の春闘では、九州に拠点を置く大手企業も相次いで大幅な賃上げを回答している。物価高騰などを背景に労働組合が高い要求を掲げたのに対し、人材確保を重視する経営側が満額回答や過去最高の上げ幅で応える動きが目立つ。

 産業用ロボット大手の安川電機北九州市)は集中回答日の13日、基本給を底上げするベースアップ(ベア)について、労働組合の要求通り月1万3千円と回答。定期昇給(定昇)分を合わせると約2万円上がり、賃上げ率は約6%。2年連続の満額回答だった。

 トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)も2年連続の満額。ベアに相当する賃金改善分と定昇相当分を合わせ、組合員平均月1万8千円の賃上げを13日に回答した。賞与も年間207万円と、労組が求めた6.4カ月分に満額で応えた。金額はいずれも過去最高という。

 九州電力福岡市)も14日、組合員平均月1万1500円のベア要求に満額で応えた。定昇を含めた賃上げ率は4.3%。賞与は年間4.97カ月の要求に対して4.5カ月で妥結。初任給は1万円引き上げ、大卒で23万円にする。衛生陶器大手のTOTO(北九州市)も満額で、定昇分を含め、平均5.0%の賃上げを12日に回答している。

 西日本鉄道(福岡市)は14日、賃金改善分と定昇相当分を合わせ、月1万2800円の引き上げを回答。労組が求めた定昇分2%とベア分1万4600円の合計は下回ったが、同社が比較した1994年以降では最高の賃上げ額だという。西部ガス(福岡市)は15日、平均8700円のベアを回答。労組は1万円を要求していた。

 JR九州(福岡市)は15日、4月からの新たな賃金制度で基本給を平均月2万4448円(9.3%)引き上げると発表した。内訳は賃金改善分が過去最高の平均2万339円(7.7%)、定期昇給分が平均4109円(1.6%)。同社は昨年、年齢に応じて基本給を2万~3万円上げることを決め、先行して3千円のベアを実施した。今回は1万7千~2万7千円を引き上げる。

 JR九州労組は新制度と別に1万円のベアを要求していた。さらなる上積みは見送られたが、夏季手当2.5カ月に加え、一時金20万円の支給が決まった。

 春闘はまだ入り口で、中小企業では、これから労使交渉が本格化するところも多い。大手で5%以上の賃上げが相次ぐ中、パートなどの非正規労働者も含め、その成果がどこまで波及するかが焦点となる。

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