精子・卵子提供で生まれた子「出自を知る権利」どこまで 法案提出へ

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後藤一也 足立菜摘 野口憲太
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 第三者の精子・卵子を使った不妊治療のルールなどを定めた「生殖補助医療法案」が、今国会に提出される見通しになった。超党派の議員連盟が法案提出に向けて、詰めの協議を重ねている。ただ、生まれた子の「出自を知る権利」をめぐり、議連の案では「不十分」という意見もあり、課題は残されている。

 「私たちにとって必要なのは、自分たちが生まれたルーツである提供者(ドナー)を、人として感じられる情報を得ること」

 第三者の精子による人工授精(AID)で生まれた石塚幸子さん(44)は長年、こう訴えてきた。石塚さんは、当事者らでつくる自助グループを主宰している。

 AIDは1948年、慶応大病院東京都)で始まった。1万人以上が生まれているが、ドナーの情報は開示されてこなかった。子どもの権利が重視されてこなかったこと、AIDの事実を子どもに伝える親は少なかったこと、ドナーが減ることへの懸念があったことなどが背景にある。一方、海外では、出自を知る権利を重要と考え、法制化している国もある。

必要なのは「自我にかかわる情報」

 2022年3月に議連が示した案では、ドナーの情報を開示するかどうかは、ドナーの意思に委ねられる、としていた。これに対し、日本産科婦人科学会(日産婦)や自助グループなどからは反発の声があがった。

 議連は昨年11月、成人した子ども(18歳以上)が希望すれば、ドナーの意思にかかわらず、身長、提供時の年齢、血液型の三つの情報を開示する案を新たに公表。ドナーの氏名など、より詳しい情報を求める場合には、ドナーの意思を確認する、とした。

 これを受けて日産婦は要望書を議連に提出。子どもが求めている情報は「自我にかかわる情報」であり、趣味、体格、職業など、個人が特定されない範囲でドナーの特性も開示情報に含めるよう求めた。あわせて情報を開示する年齢の引き下げも要望。成人を待たず、臓器提供の意思表示ができる年齢とあわせて15歳を提案した。

 石塚さんは「ドナーの身体的特徴や趣味、職業などを知りたい、と情報を選ぶ人もいると思うが、私の長年の思いはドナーに会ってみたい、人であることを感じたいというものだった」と話す。子どもがドナーについて知りたいと思う時期も様々だとして、希望を踏まえた適切な年齢で、ドナーに連絡をとる権利を保障することが重要だ、と訴える。

 出自を知る権利について、厚…

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