第5回敵が「標的」から「人間」に変わる時 元諜報機関トップの対テロ戦
パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから、半年がたちました。犠牲者が3万人を超えるイスラエルの軍事作戦に国際社会の批判が高まっていますが、イスラエルの世論は戦争継続の支持が多数派で、ネタニヤフ首相はさらなる軍事作戦を辞さない構えです。しかし、国内諜報(ちょうほう)機関シンベトの元長官アミ・アヤロン氏は「この戦争は戦場で決着をつけることができない」と断言します。
――この半年、イスラエル政府の対応をどう評価していますか。
ハマスはイスラエル南西部のキブツ(集団農場)などを襲撃し、約1200人を殺しました。犠牲者の人数だけでなく、ハマスの殺害の方法も問題でした。イスラエルという国家の存在を認めず、虐殺を仕掛けたテロ組織と戦うには地上作戦しかありません。
ガザでの戦闘には難しい問題があります。テロリストの全員が制服を着ているわけではないので、戦闘員と民間人の区別がつきにくい。さらに、ハマスの軍事部門「カッサム旅団」は住民を「人間の盾」として使う。ガザの人口密集地にイスラエル軍を引き込み、市民を殺害させることで、世界の反イスラエル世論の機運を高める戦い方です。
学校、病院、モスク(イスラム教礼拝所)を軍事拠点とし、地下には長大なトンネルを掘り、そこには民間人が入ることはできない。戦争の歴史でも非常にまれなものです。
イスラエル人のほとんどは、この戦争が正義の戦争だと信じていますが、世界からみればそうではありません。3万人以上という犠牲者の数だけでなく、その多くは女性や子供であり、(軍の作戦は)非人間的に映っている。その結果、イスラエルは国際社会の支持を失いつつあります。
今回のようなテロとの戦いでは、戦場で軍事的に決着をつけることはできません。それをイスラエル政府は理解していない。国家間の戦争と対テロ戦争は違うのです。
――どう違うのでしょうか。
ネタニヤフ政権、戦争自体が目的に
世界はまだ、クラウゼビッツ…
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