炭火で層重ねバウムクーヘン作り 発祥の地の野外施設がリニューアル

魚住あかり
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 「日本のバウムクーヘン発祥の地」と呼ばれる、広島市南区の離島・似島(にのしま)。かつて島に収容されていたドイツ人捕虜が、日本で初めてバウムクーヘンを焼いたことに由来する。そんな歴史にまつわる観光施設がこの春にリニューアルされたと聞き、島を訪れた。

 似島港からレンタルサイクルで15分ほど走ると、木々に囲まれたコテージが目の前に現れた。「ユーハイム似島歓迎交流センター」と書かれた入り口の看板の脇で、寝そべった6~7匹の野良猫たちが迎えてくれた。

 市によると、島の人口は3月時点でわずか668人で、高齢化率は50%を超す。地域の活性化を狙い、市は「似島臨海少年自然の家」を同センターに再整備した。バリアフリー設備を備えたコテージや飲酒が可能な食堂を新設。小中学生対象の施設から全世代が楽しめる場所へと生まれ変わった。

 同センターの大谷和昭所長は「島に食堂はほとんどないので、ハイキングの途中にぜひ立ち寄ってほしいです」と話す。

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 リニューアルにあたり、命名権を取得したのは洋菓子製造の「ユーハイム」(神戸市)だ。

 「少年自然の家」発行の資料によると、創業者でドイツ人のカール・ユーハイム氏は第1次世界大戦中、当時ドイツの租借地だった中国・青島市で日本の捕虜となった。収容中の1919年に県物産陳列館(現・原爆ドーム)で捕虜による作品の展示即売会が開かれ、同氏はバウムクーヘンを出品。日本人向けにバターを少なめにアレンジし、大好評だったという。

 センターではそんな歴史を学びつつ、バウムクーヘン作りを体験できる。竹の棒に生地を塗り、一層ずつ炭火で焼く。小麦や卵の配合も当時のレシピを元にしており、素朴な味わいだという。

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 センターを出た後は、再び自転車で港へ。外周16キロの島には、海岸線沿いに道路が整備され、海やカキいかだを横目に走ることができる。

 自然海岸に転がる巨石や、防波堤にとまるカモメ。立ち止まって写真を撮るうちに、帰りのフェリーの時間が迫っていた。出港5分前に船内に滑り込む。バウムクーヘンをお土産に買い忘れたと気づいたのは、広島港に着いてからだった。

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 広島市南区似島町東大谷182。敷地内にはバーベキュー設備のほか、海水プールもある。体験学習「バウムクーヘンづくり」の所要時間は、歴史説明や片付けを含めて2時間半~3時間。問い合わせや予約は、電話で同センター(082・259・2766)へ。宿泊の予約はホームページでも受け付けている。

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この記事を書いた人
魚住あかり
広島総局
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平和、教育