役者が躍動する舞台、熱い共感のまなざし 唐十郎さんが広げた劇世界
増田愛子
街の片隅、古アパートや地下の喫茶店の向こうに突如、中国東北部の平原が広がり、異世界の人物が登場する。唐十郎さんが作る演劇は、テントに肩を寄せ合って座る観客を広大な世界へといざなう力にあふれていた。
1963年、「状況劇場」の前身の劇団の旗揚げ公演で上演したのは、仏の哲学者サルトルの戯曲「恭しき娼婦(しょうふ)」。しかしその後、前衛舞踏家・土方巽さんの活動に触発され、戯曲の文学性を重視する従来の新劇とは、全く異なる演劇論「特権的肉体論」を掲げた。
「戯曲の中にある作家の劇的…
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