第2回かつての交流もういらない 高齢化で人手不足の欧州、でも閉ざす理由

有料記事揺らぐEU 「理想主義」の足元

オランダ東部オルデブルク=牛尾梓
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 青く茂った街路樹が立ち並ぶオランダ東部の閑静な住宅街に、横断幕や立て看板がずらりと並ぶ一角がある。

 「難民による犯罪の増加は事実」

 「難民申請者センターはいらない」

 人口2万4千人ほどのオルデブルク。昨年6月、この街に突如、難民の受け入れ施設を設置する計画が持ち上がった。

 「そんなものができるなら、ここには越してこなかった」

 予定地の近くに夫と移り住み、農場を始めたばかりだという女性は言った。普段、家のドアに鍵はかけず、車の鍵も付けっぱなし。施設ができれば、そんな生活も難しくなると感じる。

 元々、この街では1990年代の旧ユーゴ紛争から逃れた難民を受け入れていた。当時は教会などで交流があったという。

 だが今回、オランダ政府の難民申請者収容機関が街に対して難民申請者300人の受け入れを要請したことに、多くの住民は反発した。

 その理由は、10年ほど前にさかのぼる。

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右翼政党の台頭、止まらぬ難民・移民の流入、ロシアのウクライナ侵攻……。今、EUで何が起きているのか。6日に始まる欧州議会選を前に、記者が現場を歩きました。

 中東やアフリカから100万…

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この記事を書いた人
牛尾梓
欧州総局|欧州連合(EU)担当
専門・関心分野
国際政治、データジャーナリズム、AI、OSINT
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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2024年6月6日18時24分 投稿
    【解説】

    様々な意味で「リベラル」なオランダは難民や移民の受け入れにも寛容であり、国際色豊かな社会になったが、それでも難民を受け入れないよう扉を閉ざすようになっている。それは量の問題なのか、それとも質の問題なのか。限られた数の難民・移民であれば社会に

    …続きを読む