第5回NFLの有望選手が熱射病で死亡 米国で生かされる23年前の教訓

有料記事防ぐ 熱中症 スポーツの現場から

聞き手・大宮慎次朗
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 熱中症をはじめ、スポーツの現場での事故を防ぐ取り組みが米国で進んでいる。2001年にプロフットボールNFLの有望な選手が重度の熱中症である熱射病で命を落としたことが転機の一つになった。米国で研究を重ねた早大スポーツ科学学術院の細川由梨・准教授に、話を聞いた。

 ――米国での先進的な研究とは。

 活動に伴って体温が上がって具合が悪くなる「労作性熱中症」の研究が進んでいます。背景には、軍事医療の一環として、過酷な環境下で運動のパフォーマンスを維持するための研究がされてきたことがあります

 ――日本と米国では、市民感覚に違いがありますか。

 日本人は気象状況に応じて服装や食事を変えるといった、季節に連動した生活様式があります。市民感覚で言えば、感度が高い印象があります。ただ、多くの人が熱中症という病名やリスクの避け方を知っているはずなのに、「許容範囲内のリスク」と捉えられてしまっていることが怖い点です。スポーツ現場に特化して見てみると、米国の取り組みは進んでいます。

 ほとんどの高校には、専門資格を持った「アスレティックトレーナー」が常駐しています。私自身も資格を持っており、短い期間ですが勤務したことがあります。現地の医師と協力しながら、すべての部活動の生徒の健康管理を担当。特に暑さが厳しくなる夏場では、指導者に練習内容の調整を指示したり、氷や水が十分備わっているかをチェックしたりします。熱中症に限らず、けがのリハビリも手伝います。

 ――日本にはないですか。

 日本にもアスレティックトレーナーという資格があるのですが、若干ニュアンスが違います。米国は医療資格ですが、日本では指導者資格に分類されます。

 ――熱中症対策が進むきっかけはありましたか。

 象徴的な出来事があります。01年、NFLミネソタ・バイキングズに所属していたコーリー・ストリンガー選手が、練習中に熱射病で倒れ、27歳の若さで亡くなりました。コーリー選手の妻がNFLや防具メーカーなどに対して訴訟を起こし、09年にNFLと和解に至っています。

 ――当時はどんな状況でしたか。

 7月末、オフ明け最初の合同…

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この記事を書いた人
大宮慎次朗
スポーツ部
専門・関心分野
野球

連載防ぐ 熱中症 スポーツの現場から(全15回)

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