第3回その「箱もの」は必要か 浦和と八戸をつなぐ、測れない「豊かさ」
水が張られた田んぼの向こうに、4階建ての建物が見えてきた。
青森県八戸市の中心部から車で20分ほど。サッカーJ3ヴァンラーレ八戸の本拠、プライフーズスタジアムは二つの顔を持つ。
サッカースタジアム、そして津波が発生した際の一時避難所としての顔だ。
ここに、日本でスタジアムを建てる際の大切な何かがある気がして、記者は取材に訪れた。
スタジアムがある市川地区は海沿いの集落で、2011年の東日本大震災で津波の被害に遭った。約200戸が全半壊し、市内で最も被害が大きい地域だった。
スタジアムは市営で16年に完成した。ヴァンラーレがJリーグ参入を目指して下部リーグで昇格を重ねていた時期。専用ホームスタジアム建設の機運が高まっていた。
競技場としての収容人数は5200人。メインスタンドの上に管理棟が伸び、4階部分が一時避難所になっている。市川地区から近くの高台までは約1キロの距離がある。津波から逃げ遅れた人たちが身を寄せられる。
内部を案内してもらった。
米国と違って、日本では必ずしもスポーツへの投資熱が高いとは言えません。「箱もの」に厳しい目も向けられる中、どんなスタジアムが実現可能なのか。八戸にある独特なスタジアムを訪ね、考えました。
▽一時避難所には最大100…
- 【視点】
測れない「豊かさ」、というものについて考えてみます。この連載の第1回と第2回では、スポーツビジネスとスポーツエンターテインメントの最先端を行くアメリカのスタジアムを、同僚が訪ねました。日本とはケタ違いな施設の充実はもちろんなのだけど、彼の地
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