慶応・伊藤塾長「国立大授業料150万円」真意は教育の質と補助充実
国立大の授業料を150万円に――。少子化が一段と進む2040年以降の大学のあり方を検討している、文部科学相の諮問機関の中央教育審議会(中教審)特別部会でも値上げの議論がある。委員の一人である慶応義塾の伊藤公平塾長は、150万円程度に引き上げるべきだとの資料を3月に提出し、議論を呼んだ。発言の真意を聞いた。
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――国立大の授業料(標準額)は年約54万円。150万円は3倍弱です
少子化においては高等教育の質の向上が不可欠だ。そのために必要な高等教育の改革案を特別部会に示し、実施に必要な費用に対する自己負担額を150万円と示したのだが、後半の数字だけが独り歩きした感がある。
委員を務める中教審特別部会は今年度中に提言をまとめるためには、教育の質向上を軸としたあらゆる問題提起を必要としている。一方、東京大の授業料値上げの議論は、標準額の2割まで増額できる現在の枠組みにもとづいたもので、私たちの委員会との関連性は全くない。
――教育費の重い負担は少子化の一因とも指摘されます。なぜ大学の授業料値上げが必要なのでしょうか
いま日本の18歳人口は約106万人。2040年には82万人まで減るという推計もあり、25%も減少する。急速な科学技術の発展や人工知能(AI)の浸透などから、今後の人材育成では全体を底上げし、少子化においても総合力は上がり続けるという少数精鋭主義を確保していく必要がある。社会水準を向上し続けるためには高等教育の質向上が必須になる。優れた人材を育てなければ日本の国力は衰えてしまう。
――授業料の値上げ分で実現したい質の高い教育とはどのようなものですか
教養や判断力、議論する力、AIを使いこなす人間性やチームワーク、語学力。挙げればきりがない。留学や設備更新の費用も必要だし、論文の徹底添削や少人数教育には人件費がかかる。要は「大学が覚悟をもち学生を鍛える」ということだ。
現在、学生の3分の2が文系学部に通っているが、就職活動があるので学べる期間は実質3年足らず。研究・教育内容の高度化をふまえ、学士と修士の学位が一気通貫で得られる5年制の新課程の組織的実施を特別部会では提案したい。
――なぜ「150万円」なのでしょうか
40年以降、高水準の教育を…