第2回「お母さんに会いたい」ロシア兵は泣いた 警察が持ちかけた戦場行き
ウクライナ東部ドネツク州=杉山正
刑務所に行くか、戦場に行くか――。
ロシア兵の男性(28)は今年2月、選択を迫られた。大麻所持容疑で逮捕された直後。「ロシア軍に入隊する契約書にサインすれば、刑事手続きはしない」。警察はそう持ちかけてきた。
首都モスクワの東1千キロ弱、ロシア・タタールスタン共和国の小さな街の出身。2人で暮らす母のことが頭に浮かんだ。「刑務所に行くことで、失望させたくない」。入隊に応じることにした。手続きでは、戦闘経験のない者は前線で戦うことはなく、物資を運ぶだけだとの説明を受けた。
ウソだった。
【連載】最激戦地 ロシア・突撃兵の証言
「最も困難な状況」。ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドネツク州の前線についてこう表現しています。ロシアが兵士を大量投入し、攻勢を強めているためです。一方、現場のロシア兵は何を思い、戦うのでしょうか。この最激戦地で捕らえられたばかりのロシア兵3人が取材に応じ、攻勢の裏側にある悲惨な実態を記者に証言しました。
しかも、訓練は名ばかりのも…