民間研究機関の人口戦略会議は今年4月に公表したリポートで、ほかの地域からの流入によって人口を確保している自治体を「ブラックホール型」と名付け、出生率向上が急務だと訴えた。人口の東京一極集中をどう考えたらいいのか。東京大学の白波瀬(しらはせ)佐和子特任教授(人口社会学)に聞いた。
――ブラックホール型は、仮にほかの地域から入ってくる人がいない場合、2050年までの30年間で20~39歳の女性の人口が半分以下になる自治体を指し、東京の16区が該当しています。
人口戦略会議は人口移動がないと仮定していますが、家族を伴って東京に移り住む人もいるでしょう。人口は出生率だけに左右されるものではなく、ましてや東京で子どもを産むかどうかだけの話ではありません。
出生率は経済状況や価値観の変化による人々の行動様式に左右されます。日本でも都市化によって所得が増え、子どもが増えた時代がありました。人口が集中すれば出生率が下がるという単純な因果関係はありません。
――人口戦略会議と同じく増田寛也・元総務相が取りまとめた14年の日本創成会議のリポートは、全国の約半数の自治体が40年までに消滅の可能性に直面するという内容で、衝撃を与えました。白波瀬さんも日本創成会議には携わっていました。
何もしなかったら消滅するかもしれないけど、自治体が主体的に動けば変わる、自治体が主役なんだということが一番重要なメッセージでした。しかし危機感をあおっただけで、具体的なアクションを後押しする効果は限定的でした。
――今回は特に、若年女性人口の推計をもとに分析したことが批判を受けました。
人口に関する試算は伝え方が重要です。私は、出生率の目標値を出すことにも慎重であるべきだと考えています。今回もトーンとして「女性は地方から出ないで」と言われているような印象を与えてしまった。一方で政府は女性活躍とか言っているのに、「私たちのことをなんだと思っているの?」と批判を受けても仕方がないと思います。
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