第2回宗教から考えるトランプ支持 「マッチョ化」「男性性と暴力」を憂う
交論 トランプ支持の底流
トランプ前大統領は、なぜ支持を集め続けるのか。米大統領選の報道を見て多くの人々が抱く疑問はこれだろう。キリスト教への信仰が基盤にあるとされる米国社会で、21世紀にトランプ氏への支持が広がる現象をどう見るべきか。米国のキリスト教信仰と思想に詳しい神学者の森本あんり氏に聞いた。
キリスト教「福音派」が支持基盤
――トランプ氏がなぜ支持されるのか。ご専門である宗教の観点からは何が見えるのでしょうか。
「よく知られているのは、トランプ氏の有力な支持基盤の一つにキリスト教福音派があることです」
――福音派とはどういう集団なのですか。
「米国はキリスト教、特にプロテスタント信仰を精神的基盤にした国家です。プロテスタントのうちの非主流派が総称的に福音派と呼ばれ、20世紀後半以降、存在感を増しています」
「特徴は、書かれている言葉の通りに聖書を読もうとすることです。2千年前に書かれた聖書には当然、原子爆弾もAIも出てきません。主流派は現代にあてはめる形で聖書を読み直そうとするのですが、福音派は聖書の言葉をそのままの形で受け取ろうとします」
――実際にどういう違いとして表れるのでしょう。
「たとえば聖書には同性愛の否定と読める記述があり、福音派の人はそれを理由に同性愛に反対します」
「それに対して主流派の多くは、当時の言葉をその背景から理解しないとダメだと考えます。2千年前には性的指向や性自認への理解がなかった現実を踏まえて、平等や愛の意味を現代的にとらえ直す方向で、聖書を読み直すのです」
知的エリートによる「進歩」への反動
――そうした宗教的な違いは、いまの米国政治やトランプ支持の現象にどう反映されているのでしょう。
「進歩派と反進歩派の対立と…