サイボーグ野村萬斎が問うAIと伝統 名人芸の呼吸、継承可能か
「狂言サイボーグ」を自称する狂言師の野村萬斎さんは、修業を「プログラミング」と表現するなど、伝統文化の継承を、デジタルな発想でとらえてもいます。「サイボーグ」が見つめるAI時代は、どんな風景なのでしょう。この夏公開の映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」で〈AI家康〉を演じ、10月開催の国際シンポジウム「朝日地球会議2024」に登壇する萬斎さんに、AIと伝統芸の未来を聞きました。
朝日地球会議2024
野村萬斎さんは10月26日、東京都内で開かれる「朝日地球会議2024」に登壇します。
狂言の稽古は、師匠と一対一で向き合い、せりふと体の動きを、繰り返しまねして、身につけてゆく。萬斎さんは物心つく前から、祖父(六世万蔵、1898~1978)と父・万作さん(93)に芸を仕込まれ、3歳の時、「靱猿(うつぼざる)」の子猿役で初舞台を踏んだ。
以来、演目を一つ一つ、頭と体に入れてゆく修業が続き、萬斎さんの中には「型」と呼ばれる、中世から伝わる芸能の要素が膨大に埋め込まれている。
島村ジョー、本郷猛に自身を重ね
これを萬斎さんは生身の体への「プログラミング」と表現する。
「全てが人工的な『ロボット』ではなく、ある能力を拡張された人間、『サイボーグ』なんです。石ノ森章太郎さんの作品に親しんで育った世代ですから、『サイボーグ009』の島村ジョーや『仮面ライダー』の本郷猛に自分を重ねてきました」
「彼らは、自らの意思とかかわりなく改造され、その特殊な能力は、彼らが望んではいない戦いの場で発揮される。そんなサイボーグの悲哀に共感していました。私も、少年時代に抵抗していた狂言という場がなければ、自分の存在価値がないわけですから」
そうして体得した芸は、次の世代に手渡される。息子の裕基さん(24)に教える時は、「誤作動を起こさないよう、正確にプログラミングしなくては」と考えているという。
夢想した「AI万作」、今は
伝統芸能はこうして、人から人へ、世代を超えて伝承されてきた。だが、近い将来、AIを活用して、名人の芸を丸ごと保存することが可能になる時代がくれば、伝統芸能はどうなるのか。
「若い頃、想像したことがあ…
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- 【視点】
狂言に限らず、芸事にとっていちばん大切なことは空気を読むということだと思う。以前ベテラン舞台女優の白石加代子さんが主演されたお芝居の音楽を担当した際、各回、各地の公演を続けて拝観する機会があった。白石さんは舞台に立った瞬間の会場の空気を即座
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