准教授を「村八分」 ハラスメント認め三重大に賠償命令 名古屋高裁

渡辺杏果
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 三重大学(津市)の大学院工学研究科の女性准教授が、複数の教授によるハラスメントを受けたなどとして、大学側に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3日、名古屋高裁であった。長谷川恭弘裁判長(朝日貴浩裁判長代読)は、「継続的に村八分のように扱われ、精神的苦痛を受けた」などとして訴えの一部を認め、一審・津地裁判決を変更。大学側に慰謝料など110万円の支払いを命じた。

 控訴審判決などによると、准教授は2008年に同研究科で初の女性教員として助教で採用された。准教授は18年、採用時に不当な労働契約を締結させられたことや、説明無しに上司の教授の交代があったなどとしてハラスメントを大学に申し出た。大学の調査委員会は一部教授らによるハラスメントを認めた。

 その後、准教授は20年、改善措置せずに違法行為を助長したなどとして津地裁に大学側を提訴。津地裁は23年、訴えを棄却した。

 控訴審判決では、労働契約について「拒否は困難な状況で、事実上強要された」などとしてハラスメントに当たると認定。また卒論発表会の案内を2年間配布しなかった行為などを「教育研究活動上、事実上排除され孤立したような環境に置かれ、社会的にも明らかに不相当」として違法性を認めた。

 さらに准教授の研究室に所属する大学院生に部屋を割り当てなかったのは、「優秀な後進を育てるという大学教員にとって本質的な部分で劣悪な状態に置かれている」として、「配慮を著しく欠き、ハラスメントに当たる」と断じた。

 大学側は提訴された後に再調査委員会を設置。同委員会は23年、初回の調査結果は事実誤認で、ハラスメントは無かったと結論づけた。この再調査について控訴審判決は「損害賠償を免れるため、組織的に行われたと疑われる」と非難。初回調査で指摘された環境を大学は改めるべき義務を負いながら、改善を怠っていたと指摘した。

 三重大広報室は「判決内容を踏まえて今後の対応を検討している」とした。

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この記事を書いた人
渡辺杏果
名古屋報道センター|司法担当
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司法、地方、街