太陽フレア頻発、極大期に 今後1年継続、最悪シナリオは衛星落下も
太陽が、活動を活発化させる「極大期」に入った。今後1年は、太陽表面の爆発現象「太陽フレア」が頻発し、通信障害が起きたり、広い範囲でオーロラが観測できたりする可能性がある。米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気局(NOAA)が15日、発表した。
太陽は約11年周期で活動が活発になったり弱まったりする。太陽は2019年12月に極小期となって以降、徐々に活発になっており、活動度の指標である太陽表面の黒点の数も増えている。
太陽が極大期に入ると、大規模な太陽フレアが発生しやすくなる。放出されたプラズマの粒子などが地球に届くことで、地球の磁場が乱れる磁気嵐が起き、全地球測位システム(GPS)や無線通信に障害がでる可能性が高まるという。
低緯度でオーロラ出現、今後もチャンス
一方、オーロラ観測のチャンスは増えそうだ。
オーロラは、太陽から飛来するプラズマの粒子が地球の大気と衝突して光る。プラズマの粒子は普段、北極や南極近くに飛び込んでくるが、磁気嵐が起きると低い緯度にも向かいやすくなる。
今年5月には、過去20年間で最も強い磁気嵐が発生し、世界各地でオーロラが見られた。10月11日も大規模な磁気嵐によりオーロラの観測報告が相次いだ。
NASAによると、今後も低緯度の地域でオーロラが見える可能性が高まるという。
懸念されるのは今後の太陽活動だ。太陽は極大期に入ったが、NOAA宇宙天気予報ディレクターのエルサイード・タラート氏は「現在が活動のピークというわけではない」とする。
最強クラスの太陽フレア、頻発の恐れ
太陽の活動が最盛期を迎えたことで、5段階評価で最大の「Xクラス」の太陽フレア爆発が立て続けに発生する恐れもある。10月3日には、今回の太陽周期活動で最大のX9.0の太陽フレアが発生したばかりだ。
最悪の場合、社会活動にどんな影響が起きるのか。
携帯電話が断続的に途絶え、110番通報がつながらない。カーナビなどのGPSが最大数十メートルずれ、衝突事故が発生。低軌道の衛星が軌道を外れて落下する。航空管制レーダーが使えなくなり、航空機が運休する。電力網に異常電流が流れ、広範囲で停電――。
総務省が22年にまとめた「100年に1度の最悪シナリオ」は、社会インフラが2週間ほどマヒすると想定し、対策の必要性を指摘している。
ここまで大規模ではないが、実害は過去にも起きている。
1989年にはカナダで約9時間にわたる大規模な停電が発生し、約600万人に被害が出た。2022年は、米企業「スペースX」が打ち上げた人工衛星が磁気嵐が原因で目標軌道まで到達できず、40基が失われた。
備えも進んでいる。情報通信研究機構(NICT)は24時間先までの太陽フレアの見通しを宇宙天気予報として配信中だ。人工衛星が撮影している太陽の画像などをもとに、太陽フレアや磁気嵐が発生するとただちに臨時情報として発表している。