現場へ! クマ対策の最前線(3)
ヒグマによる被害を未然に防ぐため、現役の大学生と65歳を超えた「大学生・大学院生」が共に汗を流す地域がある――。そんな評判を耳にして、札幌市南区の石山地区を訪ねた。
約197万人が暮らす札幌市で、南部にある石山地区は、古くは軟石の産地として、高度経済成長期には市中心部に通う会社員たちの住宅地として、発展した。そうした会社員の男性らは現役時代がむしゃらに働いたがゆえ、地域社会との関係が薄く、定年後は引きこもりがちになる人も少なくなかった。
仕事で培った能力や人生経験を地元に生かす手段はないか。有志の呼びかけで2020年4月に開講したのが「石山大学」だ。メンバーは65歳以上の男性だ。毎週水曜日に集まり、地域の歴史や文化を学び、互いの特技を教え合う。5年目となり「大学院」もできたこの集まりがいま、石山地区のヒグマ対策で、地元側の原動力となっている。
8月11日、石山地区の豊平川の川岸に約60人が集まった。14年から続く毎夏恒例の草刈り行事だ。石山地区まちづくり協議会副会長の寺田政男さん(76)が「石山大学大学院1年生です」とあいさつすると、約10人の「学生」から声援があがった。
このすぐそばの石山地区の豊平川河畔林で13年夏、ヒグマが目撃されたのを皮切りに、南区の住宅地近くで目撃が相次いだ。最終的に1歳のヒグマ1頭が駆除されると、批判の声が多く寄せられたという。
「住民の不安を解消しつつ…
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