第3回海水浴場「イルカよけ装置」効いてる? 「追い払う」発想では限界
関西や東海地方から多くの人が集まる水晶浜海水浴場(福井県美浜町)で、立て続けに3人がイルカにかまれてから2日後の8月16日、私は再び現場を訪ねた。
イルカ対策に力を入れている浜で、なぜ被害がやまないのか。その理由を知りたいと思った。
【連載初回はこちら】50人にかみついたイルカを追うと…
福井県沿岸で50人を超える海水浴客らにかみつくなどしてけがを負わせたイルカは、どこから来たのか。目撃者の証言をたどり、共生の糸口を探ります。全7回の連載です。
午前8時。遊泳開始時刻を迎えると、後部座席に浮輪を載せたファミリーカーが駐車場に並び始めた。
駐車場の入り口には、高さ2メートルほどの大きな注意看板があった。注意看板は車の進路上にあり、よけなければ駐車場内に進めない。
「イルカを見たら 1.海から上がれ! 2.近づくな! 3.さわるな!」。厳しい言葉で警戒を呼びかけていた。
水晶浜は長さ約600メートル。岸から約100メートル沖までが遊泳エリアだ。
浜の中央に高さ4メートルほどの監視塔がある。監視員2人や地元観光協会会長の中島学さん(70)らが見張っている。
中島さんは監視塔の上に立ち、波間を見つめていた。
この日は空に雲が立ち込め、海は灰色に染まっていた。そこに灰色の背びれが浮いたとしても、見分けることは難しい。
中島さんは倍率7倍の双眼鏡を握りながら、こうつぶやいた。
「波のある日はイルカを発見できない。現実的には客の悲鳴で気づくしかない。その時にはもう手遅れなのだが……」
監視員の業務日誌や警察の記録を総合すると、水晶浜では今季、少なくとも16人がイルカにかまれて負傷した。そして今季最後の被害となったのが、8月14日の「3人連続かみつき」だった。
イルカはその日、3人がかまれる3時間半前から、浜に姿を現していた。私は監視員の清水達矢さん(60)に話を聞いた。
対策をしても、なぜ被害はやまないのか。記事の後半で考えます。
――3人がかまれる前、何か異変はありませんでしたか?
「イルカが現れたのは、3人…
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